ひとり親家庭支援の取り組みに対する温度差は、自治体によってさまざまだ。最も充実している自治体といえる世田谷区のWebサイトには、さまざまな支援メニューが用意されている。しかし、基本的な制度設計が厚労省によって行われた段階で、ニーズの実際と乖離していることが少なくない

「福祉的就労のような、最低賃金以下の雇用枠が拡がることの良し悪しは……なんとも判断しにくいところです。ただ、『出番がある』こと、就労の場で必要とされて活動できることは、自己評価につながります」(赤石さん)

 就労することは、義務である以前に権利である。本来は、就労という社会参加の一形態を選択する自由が、誰にもある。

「まずは身体を慣らして、低空飛行から、ほんの少しだけ角度をつけて元気になっていただくようなことですよね。『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』事務所でも、少しだけですが、1日2~3時間程度のパートの仕事の機会を作っています。でも、毎日、交通費と報酬を出すのは無理です」(赤石さん)

 そのような機会を用意するのは、本来なら、公共の役割ではないだろうか? 一NPOが、たとえば東京都内のすべてのシングルマザーに対応することは不可能だ。

「生活困窮者自立支援法の枠で、やってやれないことはないと思うんです。事業所に委託する形で。ただ、そういう事業所が出てくるかどうかは疑問です。費用対効果という面では、短期的にはマイナスになる可能性が高いですから」(赤石さん)

 シングルマザー自身の収入機会が出来、収入が上がり、税収がもたらされ、あるいは「生活保護100%」から「生活保護80%」となるなど、金額でカウントされるものだけを「効果」と考えれば、間違いなく「マイナス」になるだろう。でも、効果がもたらされるのは本人に対してだけではない。

「シングルマザーには、子どもがいます。子どもにとって、社会で活動する大人、あるいは働く大人が周囲にいることは、非常に重要なことです。就労でなくとも、社会とのつながりを子どもが日常的に見聞きすることが大切なんです」(赤石さん)

 さらにシングルマザーの場合は、学歴が低い人が多いという特徴もある。2011年の全国母子世帯等調査結果によれば、中学卒業の学歴のシングルマザーは全体の13.3%であり、この比率はふたり親世帯の母親の中卒率5%に比較してかなり高い。学歴が中卒であると、資格を取ることも難しい。結果として、中卒のシングルマザーの年間平均就労収入は、129万円という低い水準にとどまっている。

 この層への支援をもっと厚くすべきではないのだろうか。

 2015年度、初めて厚生労働省は、「ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」に1.6億円を予算化した。高校を卒業していないシングルマザー・シングルファザーが、「高認」資格講座を受講して合格した場合、受講費の40%(上限は15万円)を助成する制度だ。しかし、予算がついても、自治体は4分の1を負担する必要がある。自治体が予算化しなければ、当事者は制度を利用することができない。さらに、「学び」の機会を奪われてきた人々が、「もう一度学びたい」という意欲を持つまでの支援も重要だ。やるべきことは、まだまだ多い。

「でも、この制度を周知させ、必要な人たちが利用できるようにしたいですね」(赤石さん)