前回は「インフレが当たり前の環境では、『運用するリスク』よりも『運用しないリスク』が顕在化するため、海外先進国では確定拠出年金(以下、DC)において何も意思決定をしない人のお金をライフサイクル投資で自動運用させることが常識となっている」とお話ししました。とは言うものの、オヤジ世代の中には「勝手に運用されてしまうのは嫌だ! 今まで通り、元本割れしない預貯金にしてほしい」と思う方もいらっしゃると思います。でも、私は多くの方にとって海外では常識の自動運用の仕組みは合理的であると考えます。

 以下で、その理由について触れていきますが、ここでのキーワードは「スループット(Through put)」です。オヤジ世代の皆さんはこの単語をご存知ですか?

「スループット」で仕事を効率化

 先日私はテレビのとある番組で初めて、「スループット」という単語を知りました。その番組では、最近の若者はインプットやアウトプットに加えて、「スループット」も活用しているという文脈でこの新しい言葉を使っていました。気になったのでインターネットで意味を調べてみたところ、もともとはIT関連用語で、“単位時間当たりの処理能力”という意味があることがわかりました。ただ、この番組では、従来からの意味ではなく「スループット」を“インターネット上にある膨大な知識を借りてきて、そのまま活用する”という意味で使っていました。いわゆるコピペに近い概念ですから、これには眉をひそめる人たちも多いようです。しかし、私は従来から自分の専門ではない分野においては「スループット」を実践することで仕事の効率化を図っているため、この考えにまったく違和感はありません。

 もちろん、何から何まですべて「スループット」では自分の核がなくなり職業人としては問題がありますが、要はインプット、アウトプット、そして「スループット」のバランスが重要なのだと思います。得意な分野はインプットからのアウトプットを自分で考えて行い、そうでない分野はインターネット上の叡智を借りて「スループット」する。若者のみならず、オヤジ世代のようなシニアのビジネスマンもすでにこのようなスタイルで仕事に取り組んでいる方が多いと思います。