だが、見方を変えてみると、小選挙区制には、単一争点に集中する中小政党の「横暴」を防ぐ効果があると言えないだろうか。今回の保守党勝利のもう1つの理由には、スコットランド国民党(SNP)の躍進があると指摘されている。選挙前から、スコットランド選挙区全59議席のほとんどをSNPが獲得すると予測されていた。一方、保守・労働両党が過半数を得られず、第三党のSNPが「キャスティングボート」を握り、労働党・SNPの連立政権が誕生するとみられていた。このため、SNPが労働党を通じて政権を主導することを嫌ったイングランドの有権者が、最終的に保守党支持に回ったと言われている。

 SNP自体は、事前の予測通り56議席で第3党となった。だが、大きく予想に反したのが、保守党が単独過半数を確保したことだ。そのため、SNPの影響力は制限されることになってしまった。選挙前に懸念された「スコットランドに英国が支配される」事態が避けられたのだ。

 しかし、英国の選挙制度が比例代表制だったならば、同じ得票数でもまったく状況が異なっただろう。保守・労働両党の議席数はともに30%台にとどまれば、SNPの影響力を抑えることはできなかったはずだ。

 それだけではない。英国からの独立を党是とする英国独立党(UKIP)の獲得議席は1議席だったが、得票率は第三位の12.6%で、SNPを上回っていたのだ。比例代表制ならば、実に70議席以上を獲得した計算だったのだ。これは、UKIPが「キングメーカー」になる危険性があったということを示している。つまり、明らかに小選挙区制は「民族主義」や「ナショナリズム」を主張する中小政党が大政党を支配して「横暴」を振るうのを防ぐ効果を発揮したといえるのだ。

小選挙区制下の二大政党は、
マイノリティや少数意見に寛容である

「小選挙区制が、マイノリティや少数意見を切り捨てる」という批判に対しても、反論しておきたい。これまで、保守党・労働党の二大政党は、EU域内、アジア、アフリカなどから積極的に移民を受け入れてきた。移民は、国内の労働力を補完し、経済を下支えする重要な要素であるとの考え方からである。

 キャメロン政権でも、前述した急激な景気回復によって、ここ数年仕事を求める移民が欧州全域から殺到している。2013年10月―2014年9月の1年間で、英国の移民は29万8000人となり、2005年の32万人に次ぐ規模となっているのだ。この事実は、小選挙区制下の二大政党こそ、実はマイノリティに寛容な政策を採用してきたことを示している。