一方、セミナーの開催も根強く支持されています。セミナーは、テーマを何にするか、そのテーマに合った顧客リストを持っているかどうかが集客の決め手になります。事務所のリストが充実していれば安定した集客が見込めますし、そのほかにも顧客リストを持っている企業などと共催セミナーを開催する方法もあります。例えば、美容業界を対象としたセミナーであれば、前述の美容ディーラーさんと組むケースもあります。

選ばれる社労士になるための
重要な資質とは?

――社労士事務所のマネジメントの現状は?

肌感覚で言うと、社労士事務所の8割ぐらいは従業員1~2名で、10名以上の事務所はトップ5%程度ではないでしょうか。ですからマネジメントに関しては、一般の企業に比べて未整備の状況と言っていいと思います。

マネジメントが必要になる目安は、従業員5名ぐらいから。この規模になると、仕事は途切れなく入るのに、そのほとんどを所長が抱えざるを得ない状況に陥るものです。このような事務所には、まずは採用強化をご提案しています。成長して次のステージに行くには、優秀な人材を確保するのが先決です。社労士の資格を取得して働こうと考える人は成長意欲が高いので、この会社で働いたらどんな専門技能やスキルが身に着くのか、どんなキャリアアップのプランが用意されているのかなど、サイトなどで「この会社で働きたい」と思わせる要素をアピールしていくとよいでしょう。

――最後の質問になりますが、厳しい環境の中でも「選ばれ続ける事務所」になるために、社労士にはどんな資質や能力が求められるとお考えでしょうか。

(c) T. Usami

1つは、常に最新情報をインプットすること。社労士は、頻繁に変わる労働法の改正に対応するフレキシブルさが求められる仕事です。また、うつやセクハラ・パワハラ問題など社会的にクローズアップされる問題を扱うことが多いので、情報には敏感であるべきです。例えば弊社では「社労士事務所経営研究会」という勉強会を開催していて、新しい法律の条文について話し合ったり、社労士の方々の成功事例を共有したりしています。いま全国で200名ほどの方々が会員になっておられますが、皆さん非常にアンテナ感度が高く、いずれの事務所も着実に業績を伸ばしています。

もう1つは、提案力を強化すること。情報はインプットしただけではダメで、それをどうアウトプットするかが大切です。何も加工していない情報をそのまま経営者に渡しても、中小企業の経営には活かせません。いかに加工して、それぞれの企業に適した形で提案できるかが勝負になります。その意味でも、ある業界に詳しいとか、あるテーマに詳しいといった経験値を高めていくことが、今後はますます重要になっていくと思いますね。

(毎週金曜日更新。次回は会計事務所の経営コンサルタント 宮井亜紗子氏のインタビューを掲載致します)