もう一つ、潜在ニーズが大きいのに社労士が開拓しきれていない分野として「助成金」の申請代行があります。企業の採用や教育に関する助成金制度は充実していますが、中小企業の多くは助成金の存在を知らない、あるいは知っていても手続きが煩雑なのでかなりの時間を使わないと難しいのです。社労士にとっても面倒な業務になるので「費用対効果が悪い」と二の足を踏むケースが多い。だからこそ、効率的に行う体制を整えれば大きなビジネスチャンスにつながると思っています。
――来年1月から運用が始まる「マイナンバー制度」も、社労士と密接な関わりがあるのではないでしょうか。
はい。マイナンバー制度は市場規模が3兆円あると言われており、これからの社労士のニーズとして最も注目されています。実際、今、中小企業向けに「マイナンバー対策セミナー」を開催するとかなりの集客に結びつきます。
マイナンバーは、住民票のある国民1人ひとりに番号をつけて社会保障や税などの情報を一元管理する制度です。現在、業界全体で、企業で働く従業員1人ひとりのマイナンバーをどのようなシステムで管理していくのかに着手しています。社労士は社会保険関係の手続きをしているので自然とマイナンバーに触れる機会があり、マイナンバーを管理する委託先として新たな活躍の場が見込めます。
実はマイナンバーが導入されて1~2年もすれば、稼げる社労士、淘汰される社労士の二極化が一気に進むと言われています。なぜなら、企業が社労士を選ぶとき、「マイナンバーの管理体制が万全か」が重要な判断基準の一つになるのは確実だからです。マイナンバーに対応できない社労士事務所は、セキュリティに不安のある事務所と見なされ、新規受注が見込めないばかりか、既存の顧問先からも契約解除されてしまうこともあり得るのです。マイナンバーにいかに対応するか、管理体制が万全であることをどうアピールするかは、喫緊の課題と言えるでしょう。
稼げる社労士になるための
商品力とマーケティング力
――二極化が進む中で、稼げる社労士事務所になるためには何が必要でしょうか。まずは商品力についてお聞かせください。
第1のステップは、商品をしっかり作り込むことです。社労士業界は長らく紹介を中心に仕事を受注してきたので、どんなサービスを、いくらの価格で、いつまでに提供するかが明確にされていなかったのです。お客様に応じてサービス内容や価格を決めていたということです。しかし、ウェブサイトやセミナーなどで情報発信していくためには、それらの基準を明確に作る必要があります。
第2のステップは、そうして商品化したサービスを、マーケットが拡大しているテーマにつなげていくということです。例えば、マイナンバー制度が導入されることによって、企業ではそれに対応したルールを決めなければならない。そのルールは最終的には就業規則に記載する必要があるので、マイナンバーを入り口として就業規則の作成・変更業務につなげるわけです。