そして第3のステップが差別化です。当事務所は他の事務所とどう違うのか、それを商品軸で明確にしていくのです。法人向けのサービスで差別化を図るためには、「IT業界に強い」「介護業界に特化している」など業種で切る方法と、「助成金に詳しい」「就業規則に強い」などテーマで切る方法があります。大都市圏の場合はマーケットが非常に大きく競合も多いため、「IT業界に特化し、中でも就業規則に強い」など、「業種×テーマ」で切って強みを際立たせている事務所もあります。

業種やテーマを絞り込むことにより、事務所の強みをわかりやすく訴求できるだけでなく、商品の質を高めることにもつながります。例えば、IT業界と介護業界では仕事のやり方は大きく異なり、経営者が抱えている人事・労務上の課題も大きく異なります。そうした業界特有の現場を把握している社労士ほど経験値が高まり、経営者のかゆいところに手が届くサービスを提供できるわけです。

――商品を作ったら、それをどう発信して集客につなげていくかが重要ですね。社労士事務所のマーケティングでは、どんな方法が効果的でしょうか。

まずは、インターネットの活用です。ひと昔前の社労士のウェブサイトは、事務所概要や業務内容、アクセスを載せた“名刺代わり”のものばかりでしたが、最近は自社の強みを打ち出した「専門サイト」が少しずつ増えてきました。助成金に強いなら助成金の専門サイトを、就業規則に強いなら就業規則に関する専門サイトを作れば、そのテーマの詳しい情報を探している見込み客がサイトを訪れる可能性が高まりますし、自社のブランディングにも直結します。

このとき大切なのは、安心して依頼できる社労士事務所であることをサイト上でしっかりアピールすること。ポイントは、「就業規則に強い」といったように「商品」を打ち出すこと、「就業規則の作成は1本あたり20万円」と「料金」を明確にすることです。納期の目安や、どんな社労士が担当するのかを載せるとより親切です。さらに今後は、マイナンバーに対応していることを謳うのも必須になるでしょう。社労士事務所で、ここまで徹底したサイト構築をしているところは少数ですから、早めに着手し、検索サイトの上位表示対策なども行えば、大きな成果が見込める可能性は高いです。

もう一つ、重要なマーケティングになるのが紹介営業です。これまでは、人づてに紹介してもらうのを待つ受け身のスタイルでしたが、今は、紹介が発生するようにこちらから働きかけるケースが増えています。例えば、私の支援先の美容業界に強い先生は、美容サロンにシャンプー台などをルートセールスしている美容ディーラーさんとタイアップしています。彼らも美容サロンが喜ぶ情報を仕入れたいので、助成金は良い話題になるわけです。助成金の「耳より情報」を美容サロンに伝えてもらい、興味を持ったサロンを紹介してもらうといった営業手法で成果を出しているのです。