「目先」のことだけを考えず
人と人のつながりを

「保育園や公園の周辺で、子どもの声が『うるさい』といって抗議する高齢者が話題になりました。そういう話を聞くと、『日本は、子どもはいらないんだな、国がなくなってもかまわないんだな』と思うこともあります」(徳丸さん)

 日本で子どもが生まれなくなるということは、日本に人がいなくなるということ、日本という国がなくなるということに他ならない。

「世代で分断することは、したくありませんが、公的資金は今、総額で『高齢者11:子ども1』の比率なんです。選挙権を持っている、人数の多い、高齢者の意見が通りやすいせいなのでしょうか? すべてが『目先』です。長い目で見た政策は、何もありません。もしかすると、そのメンタリティが日本人なのかもしれませんが、長期的に考える人がいないから、『今』『今』『今』で、若い人たちにシワ寄せが来てしまいます」(徳丸さん)

CPAOの活動目的は、設立当初から、

「短期的なサポート/緊急介入、中期的な『養育の社会化』モデル事業、長期的な視野での政策提言と制度改変を目指し、活動を展開」

 となっている。遠からぬ将来、政策提言が行われるだろう。さらに、制度改変につながるかもしれない。しかし現在のCPAOは、やはり「今」にこだわらざるを得ない。8歳の子どもの「今」を支えるために、たとえば5年後の予算確保を待つわけにはいかないからだ。

「子どもたちは、本当は希望のはずなんです。その希望である子どもたちを、日本の社会は、なぜ、こんなに大切にしないのか? と思います。でも、私たちは本当に、何もできません」(徳丸さん)

 そんなことはない、と私は思う。しかし、日本で貧困状態にある数多くの子どもたちと親たちすべてに働きかける力は、CPAOにはない。

「とにかく、『子どもたちに、暖かい気持ちを伝えられれば』と思っています。生きていれば、いろいろなことが起こります。その時、人や社会を信じていればサバイバルできるんじゃないかと思います。できることは、そのくらいです。子ども時代の、たった一度の暖かい経験で生き延びてきたというシングルマザーの証言を、いくつも聞いています。それぐらいなら、私たちにもできる。実際に、関係した子どもたちから、私たちに『SOS』の連絡が来るようになってきています」(徳丸さん)

 とはいっても、子ども時代の健全な生育を支えられる家庭環境も、社会に接続されるために充分な教育も、「気持ち」だけで実現できるわけはない。

「でも、最後は『人と人』です。困った時に『助けて』と言えない、人や社会に絶望した人が、自殺や餓死を選ぶんです。人や社会を信じて、声を上げ続けてくれたら、生き延びる確率は高くなるはず。活動を通して、『世の中、捨てたものではない』と感じています」(徳丸さん)

 そうあってほしい。私も、自分自身のために、そう信じたい。

 次回は、7月から施行される生活保護の家賃補助(住宅扶助)削減に関して、誤解されやすいポイントを中心に、何が起ころうとしているのかをレポートする。日本の「住」の最低ラインは、どのように変化するのだろうか?