経営資源の時間的な成長を重視する学習アプローチ

(4)学習アプローチ

 最後に説明するのが、冒頭の図の右下、企業の「内側」にある経営資源の時間的な成長を特に重視する学習アプローチです。

 これは、現在の事業活動を通じて蓄積される自社の経営資源(特に人的経営資源や情報的経営資源)を将来の事業活動に活かす考え方です。

 ポジショニングアプローチのように外部環境に対しての方向性を明示しないので、これが戦略論なのか? という疑問を投げかけられることもあります。

学習アプローチで欠かせない3つのポイント

 学習アプローチでは、次の3つのポイントが重要です(参考 青島矢一、加藤俊彦著『競争戦略論』)。

(1)学習の「場」の選択

 テニスの錦織圭選手が躍進したのは、生来の才能と自身の努力があったのが一番でしょう。しかし、一流指導者・一流プレーヤーが揃っているIMGアカデミーを学習の「場」として選択したことも大きいでしょう。

 ビジネスもこれに似ています。たとえば、自動車部品業界では、トヨタと取引すると品質、コスト、納期の水準が上がると言われています。

 また、VW、ダイムラー、BMWと付き合うと、さらに別の学びがあるかもしれません。取引先を選ぶのも(選んでもらうのはひと苦労ですが)、「場」の選択の一つです。

(2)実践重視・やってみなはれ

 学習アプローチは、演繹的にいくら精緻に考えても、「結果は、ほとんどの場合予測どおりにはならない」という前提に立っています。

 思ったように売れたか売れなかったかだけでなく、シンクまわりの洗浄用の洗面台が朝シャンに使われたり、物流における履歴管理用に開発されたQRコードが携帯読み取り用に使われたり、オフロード用に開発されたメルセデスのGクラスが都会で使われたりという、予測とは違う用途でヒットする場合もあります。

 ある程度の仮説ができたら、次にやってみることが重要です。サントリーの創業者である鳥井信治郎が、ことあるごとに口にした「やってみなはれ」の精神です。

「結果を恐れてやらないこと」を悪とし、「なさざること」を罪と問うのです。

(3)レビュー重視

 (2)と関連しますが、学習アプローチは「結果はほとんどの場合予測どおりにならない」という前提だけに、事後のレビューが重要です。うまくいかなかった場合にどうするか。

 誰が悪かったのか犯人捜しみたいになったり、情緒的に「努力が足りなかった」と懺悔したりするのでは意味がありません。事実を元に、「なぜ、なぜ、なぜ」と対話を繰り返しながら、チーム学習していくのです。

※次回は、6月18日(木)に掲載します。