トヨタとサプライヤーの関係をゲームアプローチで分析すると…
時に先鋭的で議論を呼ぶこともあるオリックスやソフトバンクとは対極と言ってもいい、日本のものづくり産業のリーダー、トヨタ自動車もゲームアプローチ的に見るとなかなかの巧者です。それは、トヨタとサプライヤーの関係です。
トヨタは基本的に2社購買が原則。
品質、価格、納期に対する要求水準が非常に厳しいことで有名ですが、トヨタに入って実績をつくりたいサプライヤーは山ほどいるため、サプライヤーはノーとは言いにくい状況です(しかもトヨタはサプライヤーの原価を推定する名人でもある)。
トヨタにとっては相手の戦略にかかわらず、自分に優位な戦略を選択できるゲームに見えます(ゲーム理論ではこれを支配戦略と言います)。
しかし、トヨタに採用されたサプライヤーは、しばしば他の自動車メーカーでトヨタでの実績を評価され、もっと高い価格で買ってもらえることも知られています。トータルではサプライヤーにとってもハッピーな状態になりうるのです。
つまり、一見するとトヨタの支配戦略に見えますが、実はトヨタとサプライヤーの両者が最良の選択をしている(ゲーム理論ではナッシュ均衡と言います)のです。
ですから、トヨタに対するサプライヤーの忠誠心が高く、関係が長続きしていると見れば、トヨタは実に巧みなゲーム運びをしていると言えます。