こうした中、日本企業はFTA締結に積極的なASEAN諸国などの生産拠点から輸出を拡張し、日本政府が自由貿易圏の構築に後れを取る中で製造業の空洞化が着実に進んできた。

 日本がFTAやEPA交渉で他国に後れを取ってきた原因の1つに、農産品の市場開放問題がある。すなわち、農業従事者の雇用維持や食料自給率低下を防ぐ目的で、一部の品目に高い課税が課されている。しかし、農業では従事者の6割が65歳以上であり、新たな担い手が必要とされているにもかかわらず、他産業に比べて著しく所得が低く、雇用の受け皿としての期待に応える将来像が描けていない。

 一方で、所得向上の一役を担うと期待される大規模で効率的な経営を行う法人の数は増加しているが、その進展は不十分であり、数々の制度問題が農業の効率化を抑制している。このように、日本経済の地盤沈下の背景には、農産物市場開放問題も関係していると言える。

EUに見る「法人税パラドックス」
海外に比べてまだ高い日本の法人税

 法人税率の高さも我が国経済の地盤沈下を助長してきた。これまで、海外諸国では経済のグローバル化に伴う資本移動の高まりを背景に、国際競争力強化や経済活性化を見据えた法人税率の引き下げが相次いできた。こうした情勢の中で、日本の法人実効税率もようやく2016年度に31.33%まで引き下げられることが決まったが、海外の平均水準と比較すれば依然として5%以上も高い。

 こうした中、法人税率引き下げ競争が激しいEUでは、法人税率引下げと共に法人税収の名目GDPに対する比率が上昇する『法人税パラドックス』と呼ばれる現象が見られている。この成功の要因としては、法人税率引下げと同時に課税ベースの拡大を行ったことや法人なりのインセンティブが働き会社数が増加したこと、さらには企業収益が増えて税収が増えたこと、などが挙げられている。