スティーブと瀬戸が部屋を出て行った後で、健太は、チョウと山田と一緒にライン2内のチェックポイントの設定を確認した。麻理も議論に加わり、先ほどの図面に配置する人員も決めることができた。

 また、山田は各チェックポイントにおけるチェック項目を簡単に書き起こしていった。チョウは山田に「これはライン上のチェックポイントなので、あまり複雑にならないようにしてください」と注文をつけた。山田もそこはよく理解していて、組立部分の簡素なチェックポイントに加え、「ポカよけ」と言われる、不良品をラインから取り除く仕組みも導入しようと提案した。

 チョウはこれを気に入った様子で、ライン2のチェックポイントを実地に確認しようと山田を誘った。健太は2人に明日もう一度進捗を確認させてもらうように伝え、退室するチョウと山田を見送った。

 麻理と2人きりになった健太は、改めて礼を言った。

「モデルラインの提案、ありがとう。細かくそれぞれの工程を確認していけば、確かにどこに不良品の発生原因があるか突き止められるね

「健太さんの『一つ一つ障害を取り除く地道な努力』という言葉で思いついたの。原因がわからなければ、生産プロセスを細かく分けて、どこに障害があるかを確認することが有効だわ。だったら、その確認作業専用のラインを作ってみればと思ったの。

 以前、青森の自動車部品工場に監査に入ったとき、トヨニチ自動車のラクセスという高級ブランド特注の部品を作っているのを見たわ。その際、従来よりも次元の高い品質基準を満たすために、専用の生産ラインを作って、それぞれの工程で生産品質を高めていたのを思い出したの。皆がこのアイディアに賛成してくれて良かったわ」

「ミーティングの人数を絞ったのも良かったね。定例報告会のように大人数だと、意見集約が難しいからね」