「資料に書いていないこと」を
どれだけ伝えられるかが勝負
プレゼンの最大の長所は、プレゼンターのメッセージを「ライブ」で届けられることです。ライブのよさは「スライドの内容以上のこと」を伝えられる点にあります。
音楽のライブでもそうですよね。人がライブ会場まで足を運ぶのは、CDや音源ファイルでは味わえない「何か」を体験したいからです。
紙の資料だけでは伝えきれないことがあるからこそ、相手の目の前で話をして相手のアクションを引き出す―これこそがプレゼン本来の目的です。
では、スライド資料に書かれていない「何か」とは何なのか?
実はプレゼンテーションのほとんどがこの「何か」で構成されています。音楽のライブと同様、プレゼンターの声のトーンや表情、その場の雰囲気というのは、重大な要素です。
プレゼンの場合、最も大きな割合を占めるのは、プレゼンター自身の「身体の動き(アクション)」です。身体の動きといっても、ステージ上で指をパチンと鳴らしたり、ガッツポーズをしたりというような派手なものを思い浮かべる必要はありません。ちょっとした手の動き、指の動き、身体の運び、姿勢、そして目の動き。こうしたものはプレゼンの成否を大きく左右します。
「おへその前で手を組む」を基本姿勢にする
まず、すぐにできるのが「手」の動きです。とても簡単にもかかわらず、このテクニックを使っている人は思いのほか多くありません。
手の動きはプレゼンターの「態度」や「感情」を表現する強力なツールとなり得ます。事実、プレゼンのうまい人の多くは、言葉を発するのと同時に手を頻繁に動かしています。
これは裏を返せば、ネガティブな感情も手の動きに出るということ。自信のなさなどが思っている以上に伝わりすぎてしまう可能性もあります。聞き手の視線はそれくらい「手」に引きつけられるのです。
私がおすすめしているのは、おへその高さくらいで手を組む姿勢です。
手の組み方は、クリスチャンの「お祈り」のように指をからめず、左右の手の平を少しずらして自然に合わせたスタイルがおすすめです。
立っているときは、これを「基本姿勢」とすることで、安定感のある印象を与えることができます。
こうして組んだ手を胸の高さまで持ってくると、「さあこれから、何か始めるぞ!」という雰囲気を出せます。トークの序盤などで意識して実践してください。お願いやお詫びのタイミングでこの姿勢をとると、丁寧な印象を与えることもできます。
手を動かすのは
「位置・場所・立場」を表すタイミング
トーク中はこの姿勢を基点に手を動かしていきます。
よく言われますが、いわゆる目の前でろくろを回すような大きな動きが自然に見えます。ほかにも、両方に広げて会場全体、聞き手全体を包み込むような動きもおすすめです。
そのうえで、「位置・場所」を表すタイミングで手を動かしましょう。実際に「入口の方向」と言ったら入り口に手を向け、「後方の方々」と言ったら後方に手を向けます。
さらに「立場」を表す場合、「上司である部長が」と言ったら手を上に、「私より年下の若い世代が」と言ったら手を少し下に向けます。「自分たちは」と言うときに自分の胸や首元に手を持っていき、「お客様」と言うときに手を客席に向けて広げる。
これらは、初心者にもやりやすい動きです。