「墓が足りない」
現在、都市部に住む高齢世帯は口々にこうつぶやいているという。実は、団塊世代の退職ラッシュに伴う高齢世帯の増加により、首都圏で「墓難民」が急増しているのだ。
日本の年間死亡者数は、2003年に55年ぶりに100万人を突破し、今後は5年毎に10万人ペースで増加して行く見通しだ。2035年には、軽く160万人を突破する。特に東京都では、毎年死亡者が莫大な数に上ることに加え、「田舎にある先祖代々の墓を都内へ改葬したい」という人も増えている。
ところが現在、東京都が運営する都立霊園はわずか8カ所しかない。増加の一途を辿る需要に行政の対応が追いつかず、慢性的な墓不足が続いているのが現状だ。
しかも、都立霊園には「原則として生前に申し込むことができない」という制約もあり、公募時の抽選倍率はハネ上がっている。青山、多磨、小平、八王子などの都立霊園では年に1回公募を実施しているが、抽選倍率が20~50倍に達することも珍しくない。「5年以上応募し続けているのに墓が手に入らない」と嘆く人はザラだ。
首尾よく抽選に当たったとしても、高齢者にとっては「価格」も悩みのタネとなる。たった1~2平方mの区画でも、平均的な費用は、墓地の使用料が30万~60万円、毎年の管理料が1000~7000円、墓石代200万~400万円もかかるから、バカにならない。
首都圏なら軽く数百万円!
高い使用料が拍車をかける墓の供給難
とりわけ地価に連動して価格が決まる「使用料」は、人気の高い霊園で高騰を続けている。都内有数の高地価エリアである青山霊園を例に取れば、1平方mあたりの使用料は、なんと300万円以上。「比較的手ごろ」と言われている多磨霊園や小平霊園でも、50万円以上は軽くかかるのだ。
都立霊園の抽選になかなか当たらない高齢者については、生前墓の申し込みが可能な民営霊園や、お寺が運営する寺院墓地を物色する向きも少なくない。だが、管理状況がよい民営霊園の抽選倍率や使用料は、都立霊園と同等、もしくはそれ以上となってしまう場合が多い。