今、市場関係者の注目を最も集める決算。それはシティグループの1~3月期決算だ。注目点は言うまでもなくサブプライム関連の巨額損失である。

 4月1日にひと足先にUBSがサブプライム関連資産とオルトA(サブプライムとプライムの中間の信用度の住宅ローン)関連資産などで、1~3月期に190億ドルの損失を計上すると発表した。同社は2007年12月末で276億ドルのサブプライム関連資産を保有していたが、評価損計上と売却で3月末には150億ドルにまで減少した。

 シティの2007年12月末のサブプライム関連資産保有額は373億ドル。UBSの資産減少が全額評価損だとして、その減少率をシティの保有額に当てはめると損失額は200億ドル強となる。一方、12月末から3月末までのトリプルA格のABX指数(サブプライム関連証券化商品の価格指標)の下落率約25%を当てはめると90億ドル強だ。同社の損失額は両者のあいだに収まる公算が大きい。

 さらに「いまや金融機関の損失計上の焦点はオルトA」(中川隆・大和証券SMBC次長)と見られ、同社も損失計上は免れないだろう。

 加えて、シティは12月末で430億ドルのLBOローンを保有している。「市場ではLBOローンの時価評価額は簿価の8割との見方もある」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)。すでに評価損を計上しているドイツ銀行などと同様、同社も無傷ではすまないだろう。

 これらのトリプルパンチで100億ドル台半ばの損失が表面化する可能性も十分にありうる。通例となった損失見合いの自己資本の拡充は必至だ。UBSは今回株主割り当てによる資本調達に踏み切ったが、これは政府系ファンドなど第三者から増資を仰げなかったためと見られる。調達の難度が増している状況はシティも同じだろう。

 シティの経営陣は、損失計上と資本調達のいたちごっこに神経をすり減らしているのではないか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田孝洋)