クラウドコンピューティングは、ICTベンダー自身にも従来の製品販売からサービス提供へと、ビジネスの大きな転換を迫る。果たしてベンダー各社は、どのような事業戦略を描き、激戦市場を勝ち抜こうとしているのか。今回は、新日鉄住金ソリューションズの取り組みを紹介する。
基幹システムに対応した
月額利用のクラウドサービスを展開
「私たちの目指すクラウド事業は、お客様を取り巻く状況を理解し、それぞれの環境に合った本当に使えるサービスを提供することにある」
こう語るのは、新日鉄住金ソリューションズ(以下・NSSOL)の大城卓取締役上席執行役員ITインフラソリューション事業本部長だ。長年にわたって顧客企業の情報システムの構築・運用を担ってきたシステムインテグレーター(以下・SIer)ならではの発言ともいえる。
それもそのはず、同社は大規模ITユーザーでもある新日鉄住金のIT部門を前身とする大手SIerである。そこで今回は、同社のクラウド事業における取り組みとともに、SIerが提供するクラウドサービスとはどのようなものか、クラウド時代のSIerの役割とは何か、といった観点でも考察してみたい。
NSSOLが現在提供しているクラウド関連サービスは、「absonne」(アブソンヌ)というブランド名のもと、マネージドクラウドサービス「absonne Enterprise Cloud Service(ECS)」と、プライベートクラウド構築サービス「absonne Enterprise Cloud Framework(ECF)」からなる。
absonne ECSは、ミッションクリティカルな環境で利用されることを想定した月額利用のクラウドサービスで、「基幹システムとしてTCOを30%削減」「稼働率99.99%以上の高可用性」「オンプレミス(従来の自社運用形態)と連携させたハイブリッドインフラとしての運用」といった3点を同時に実現することを売り物としている。また、オンプレミス環境で利用しているIPアドレスをクラウド環境にも持ち込めるため、両環境を単一のネットワークとして運用できることも大きな特長である。
一方、absonne ECFは、absonne ECSのアーキテクチャを利用してプライベートクラウドを構築するエンジニアリングサービスで、クラウドを自社の設備として所有したいという顧客ニーズに応えたものである。absonne ECSとabsonne ECFによって構築されたシステムが混在するハイブリッドクラウドの環境を一元的に管理することも可能で、自社所有から月額利用に移行するまでの暫定措置として利用する有効な手立てにもなっている(下図参照)。