経産省調査では「業種分布はあまり変化していない」と分析していますが、よく見てみると、バイオ・ヘルスケア・医療機器が546から620に増えています。経産省調査には書いていませんが、この6年間で大学発ベンチャーの動き、特に東大関連を振り返ってみると、前述の日経記事に出ていたユーグレナは2012年、ペプチドリームは2013年にそれぞれ上場しています。前者は日本を代表するバイオベンチャー、後者も創薬研究のベンチャーです。両社は昨今の医療イノベーションのトレンドリーダー。他にもこの分野で起業する動きが増えていることを、裏付けています。

ITからバイオへ
理系ベンチャーの波

 これは私の見立てですが、バイオ・ヘルスケア・医療機器のベンチャーを育成するには、単にアイデア勝負だけでなく、それをインキュベートするための研究施設が揃っていなければなりません。いわば理系人材によるベンチャーを支える研究インフラは、国公立のほうが比較的恵まれています。

 一方、90年代から2000年代までベンチャーの花形だった「IT系」(アプリケーション、ソフトウェア、サービス)の大学発ベンチャーの数の減少傾向が、私大の低調とリンクしているのかもしれません。経産省調査で経年比較の対象になっていた2008年といえば、サイバーエージェントやミクシィといったSNSなどのサービスが台頭してきた頃。これらの分野は大学の巨大な研究施設がなくても、社会のニーズを先取りした学生たちがITを使って、初期投資を安くして起業し、アイデア勝負でサービスやソフトを開発して成功を目指せました。文系学生でもプログラミングを勉強するなり、プログラミングが得意な理系の友達を巻き込むなりして、参入できました。

 実際、その時期にマスコミで脚光を浴びたIT起業家の多くは文系学部出身です。私立大学出身で見ると、サイバーエージェントの藤田晋さんは青山学院経営学部、グリーの田中良和さんは日本大学法学部の出身です。楽天に自ら立ちあげたITベンチャーを売却し、球団創設で活躍した小澤隆生さん(現ヤフー執行役員)も早稲田大学法学部で学び、電脳隊をヤフーに売却して、自らはGyao社長になっていた(当時)川邊健太郎さん(現ヤフー副社長)は青山学院法学部出身です。みなさんよく存じ上げていますが、彼らをロールモデルとした文系学生が大学発ベンチャーの主な担い手でした。しかし、“文系率いるIT系ベンチャー” はSNSが社会的に普及するなかで、ネタ切れした側面もあります。