「真因」を探せ

 ビジネスの問題には必ず要因があります。しかも、要因というのは複数存在していることが往々にしてあると思います。その複数の問題から真の要因を見つけ出す必要があるのですが、それをトヨタでは「真因」と呼んでいます。

 例えば、会議で使用する資料がうまく作れないという場合を考えてみましょう。「資料を作る時間をなかなか取れない」「資料を作るための情報が足りない」「資料を作る技術的なスキルが足りない」などなど、資料が作れない要因はいくつも挙げられると思います。

 このように、いくつもの要因に振り回されたり惑わされたりすることなく、「資料を作ることができない真の要因は何なのか?」と“真因”にフォーカスする必要があるのです。そして、速やかに真因を特定したら、それを優先的に解決していくことが重要です。

 上記の例で言えば、時間がいくらあっても、情報がいくら用意されていたとしても、それを形にするスキルが足りずに資料作りが進んでいないのかもしれません。だとすると、スキルを身につける方法を考えるか、スキルを持っている人間に依頼するか、などと考えていく必要があるわけです。

「5回のWHY」をぶつけよう

 では、真因を明確にするためには何をすればよいのでしょうか?トヨタグループでよく言われていたのは、「5回のWHY」、つまり問題に対して「『なぜ』を5回はぶつけよう」ということです。資料が作れないのであれば「なせ作れないのか」と自問自答し、次に出てきた答えに対して再び「なぜそうなのか」とぶつけていきます。

「忙しい」だとか「時間がない」といった嘆きは口をついて出てきてしまいがちですが、それらを口にしたところで何の解決にもなりません。忙しいなんてのはただの形容詞に過ぎないのです。「何だか忙しくなってきたな」と思ったら、すかさず「今なぜ忙しいのか?」と「なぜ」をぶつけていくべきでしょう。

 そうすると、表面上は「忙しい」と思っていた目の前の事象も、「なぜ」をぶつけていくことによって徐々に真因が見えてくるはずです。どうでもいい雑務が多かったために忙しいと感じるようになったのかもしれませんし、整理整頓ができていないせいでモノを探す時間が多く、忙しくなってしまったのかもしれません。

 決して表面上だけの事象で嘆いて思考を止めてしまうのではなく、「なぜその状態になっているのか?」「それはなぜなのか?」と掘り下げていくことで、真因に辿りつきやすくなるはずです。部下や同僚に「なぜ?なぜ?」とぶつけていくと嫌われてしまう可能性がありますが、頭の中で自問自答するようなクセをつけると良いのではないでしょうか。