目的は何か?
本連載の第1回でもご紹介した通り、現場で一番よく聞く口ぐせは「目的は何?」でした。日々の仕事をしていると、手段が目的化してしまうことがよくあります。そんな時には、「なぜその行動をするのか」「目的は何なのか」という視点に、常に立ち返らなければいけないと思います。
みなさんが今やっている仕事は、「何のためにやっているか」をしっかり説明できますでしょうか?私もトヨタグループを離れてからいくつかの企業に勤めましたが、部長の体裁のためにやる仕事だったり、社内会議に臨むための事前会議があったり、「これは何のための仕事ですか?」と問いただしたくなる場面にいくつも遭遇しました。
目の前の仕事をする目的を見誤ってはいけません。常に目的を意識しましょう。会社組織というのは価値を出すために存在しており、私たちはそのために仕事をしているはずなのですから。
「三現主義」で現場を重視
「正しい解決策」を考えるうえで外せないのが「現場」です。トヨタグループはとにかく現場を重視しており、毎日現場にいた私にとってもヒシヒシと肌で感じることの一つでした。現地・現物・現実を重視する「三現主義」という言葉も、古くから存在していました。
「三現主義」という言葉通り、店舗のマネージャーや店長はもちろん、地区を担当する責任者や役員など、毎日のように誰かしらが現場に顔を出してきます。そして彼らは、私たちの手が空いたすきに話しかけてきて、多くの質問を投げかけてきました。
では、なぜ上司はわざわざ現場へ赴き、話を聞きたがるのか。それは、例えば問題が起きた場合であっても原因が異なっていたり、複数の要因が複雑にからみあっているからだと思います。原因が違えば問題の大きさや影響範囲、影響度も変わるため、当然ながら対処の仕方も異なってきます。
もし実際の原因とは別の原因を特定してしまうと、無駄な時間とお金を費やして的外れな解決策を講じることにもなりかねません。現場に行って現物や現実を見ずに机上で問題を見極め、推測で判断を下そうとすると、どうしてもリスクが伴うことを知っているからなのだと思います。
以上、ここではあまりご紹介できませんでしたが、新刊「トヨタの自分で考える力」ではさらに詳しく口ぐせを取り上げながら解説しています。また、書籍ではストーリー形式で展開されておりますので、読み進めていくうちに自然と思考から行動までのプロセスを理解することができます。ぜひお楽しみください。