中国共産党は“安倍談話”を
どう評価したのか?

談話には3つのキーワードが盛り込まれ、中国側の要求を満たしたにもかかわらず、中国の政府が日本を牽制し、メディアが日本を批判したのは何故であろうか

前回コラムでは、習近平国家主席率いる中国共産党指導部が戦後70年に際して発表する“安倍談話”に何を求めるか、というテーマを扱った。

「あくまでも“侵略”“植民地支配”“心からのおわび”を求めつつ、ボトムラインは“村山談話”という4文字の固有名詞に引く」

 このように指摘した上で、私は「安倍談話が中国側の“要求”を満たしたものになるか、“ボトムライン”を満たしたものになるか、あるいはそのどちらも満たさないものになるかによって、中国側のその後の対日政策は少なからず変わってくるであろう」という推察を述べた。

 8月14日午後、閣議決定を経た“安倍談話”は世間へと公表され、日本や海外のメディアがリアルタイムでそれを追いかけ、分析を加えるという具合であった。それだけ安倍晋三首相の歴史認識に世界中の注目が集まっていたということだろう。

 本稿では、前回コラムの続編として、中国共産党指導部が“安倍談話”をどう認識し、どう反応し、そしてこれからの対日関係をどうマネージしていこうとしているのか、という問題を考えてみたい。

 まずはファクトを拾ってみたい。

 安倍談話は“侵略”“植民地支配”“心からのおわび”という3つのキーワードを明確に含んでいた。

前回コラムでは、仮に3つのキーワードに言及しなかったとして、“村山談話”という固有名詞に明確に言及することが中国共産党のボトムラインである、と指摘した。

 結果的に、安倍談話は“村山談話”には触れなかった。“代わり”に、「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました……(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」というパラグラフにおいて、安倍内閣が歴代内閣の立場を継承することを表明する形を取った。

 “心からのお詫びの気持ち”という言葉を使用している。