原油、金属、農産物など
国際商品価格はほとんどが下落

原材料価格軒並み下落でも、食品の値段が上がるのはなぜか原材料価格が軒並み下落の中で、食料品は値上がりが顕著だ

 原油、金属、農産物などの国際商品(コモディティ)価格の下落が続いている。理由はそれぞれ異なるのだが、ほとんどの商品が下落していることから、共通の要因があると考えられる。

 主な要因としては、(1)米利上げを背景としたドル高の進行、(2)原油価格が下落していること、(3)期待されていた新興国経済の成長ペースが中国景気の急減速などの影響を受けて予想を下回っていること、が挙げられる。

 (1)のドル指数の上昇は生産地での生産コスト引き下げに寄与するため、供給増加要因となる。また、ドル高の進行は消費国にとっては自国通貨ベースでの価格上昇につながり、消費を抑制する。具体的な例を挙げれば、原油が50ドルで為替が100円であれば円建ての価格は5000円だが、ドル高が進行して円が200円になれば、円建ての価格は1万円に上昇するため、消費を抑制する効果を持つということだ。基本的にドルと商品価格が逆の動きをすることを市場参加者が理解しているために、市場はこれに非常に敏感に反応するようになっている。

 ドル高と連動している部分もあるが、(2)の原油安の進行も生産コストの引き下げを通じて、価格を下押ししやすい。

 これ以上に大きかったのが、(3)の中国・新興国の成長見通しが、中国の株価急落などでより悲観的な方向に傾いていることだろう。需要の増加期待が強い状況であれば、供給過剰状態にあったとしても価格は急に下落するものではない。

 筆者は、今後の商品価格動向を左右するのは需要を牽引する中国・米国の景気動向だと考えている。中国政府は今のところ景気のハードランディングを回避するために公共投資に前向きとみられており、これが具体化すれば、景気への過剰に悲観的な見方を後退させ、価格を下支えることになるだろう。

 ただし、8月11日・12日・13日に続けて行われた人民元の切り下げが、中国の政策対応に関して暗い影を落としている。そもそも人民元はドルペッグ制であるため、ドルが独歩高となる中で実体経済にそぐわない上昇を続けていたのも事実ではある。しかしこのタイミングでの人民元の切り下げは、対応が後手に回っており統一感がないとの印象を与えるもので、市場は「中国当局は危機対応能力が低い」と考え始めている。