少子化で市場が縮小していく日本においては、新たな市場開拓という面で避けては通れない海外進出。成長ポテンシャルの高い新興国にチャレンジしようと意気込む日本企業も少なくない。ただし、そうした企業の多くの行き先はASEANどまり。その先のインド洋をなかなか越えることができない。そんななか、「いまこそ、日本企業はアフリカに向かうべきだ!」と熱く語るのは、当連載の著者・一橋大学の米倉誠一郎教授だ。
なぜ、アジアではなく、アフリカなのか? 日本企業のアフリカへの挑戦を阻んでいるものはいったい何か? そこで、いまホットなASEAN進出をはじめ、日本企業の海外進出事情に詳しい、スパイダー・イニシアティブの森辺一樹氏との特別対談を企画。「遠くて遠い国・アフリカ」へ日本企業がチャレンジする意義と課題を考える。前編、後編の2回にわたってお届けする。
(構成/執筆:ダイヤモンド社 クロスメディア事業局 宮田和美)
すれ違いが長く続いてきた日本とアフリカ
米倉 当連載の第1回でもお伝えしてきたとおり、僕は2011年からアフリカに行くようになりました。2013年からは、南アフリカ・プレトリア大学のビジネススクール[GIBS]日本研究センターの顧問をしています。また、昨年2014年にアフリカ東部・ソマリランドに開校した大学院「Japan-Somaliland Open University」の学長も務めています。いまや、アフリカとは切っても切れない仲となりました(笑)。
僕がこうした活動を続ける目的はたったひとつ。「もっと日本人にアフリカのことを知ってほしい。そして、アフリカの人にも日本のことを知ってほしい」ということ。極めてシンプルです。というのも、僕が初めて南アフリカに行ったとき、現地の人が日本のことをほとんど知らないばかりか、韓国や中国と比べて日本の存在感があまりにも薄いという現実に愕然としたからです。一方、日本人の多くも、アフリカのことをほとんど知りません。そうした、両者のすれ違いが長く続いています。
しかし、両者のことを知る僕は、「日本とアフリカは、お互いのことをもっと知れば、絶対に良いパートナーになれるはず」――そう思いました。であれば、その一助を少しでも担いたい。そこで、「日本とアフリカをつなぐ」活動を始めたんです。
森辺 そんな米倉先生の熱い想いにほだされて(笑)、僕も昨年、先生と一緒に初めて南アフリカに行きました。先生が毎夏主宰している南アフリカ現地事情視察ツアーです。ビジネスパーソン中心の30名とともに行く10日間のツアーでしたが、通常の観光ツアーでは絶対に味わえない、南アフリカのさまざまな顔を垣間見ることができました。いまアフリカが主戦場といわれるBOPビジネスの最前線や、ブラック・ダイアモンドと呼ばれる黒人中間層が暮らすタウンシップ、白人をはじめとする富裕層に人気のショッピングモールなど、先進国と途上国が同居する国ならではの面白さがありました。
米倉 実は南アフリカは、アフリカ諸国の中ではナイジェリアに次ぐ経済大国です。1人当たりのGDPは世界85位(6621ドル)。中国の83位(6958ドル)と大差ありません。しかもこのマーケットには、いま世界が注目するBOPビジネスのメインターゲットとなる貧困層に加え、ブラックダイアモンドと呼ばれる購買力を持ち始めた黒人中間層の数が急速に増えています。さらには、日本人の500倍くらいの資産を持ったスーパーリッチと呼ばれる層もいます。さきほど森辺さんが言ったとおり、まさに南アフリカは「先進国と途上国が同居する国」そのもの。こんな面白いマーケットはなかなかありません。