進化論の父・ダーウィンの言葉のとおり、ビジネスの世界においても、「変化に対応できる者」だけが生き残ることができる時代。しかしこれからは、変化に付いていくだけでは不十分かもしれない。むしろ、その変化の“先頭”に立ち続けることだけが、企業が継続的に成長を続ける唯一の方法だと言える。
では、われわれ日本企業はどうしたらその先頭に立てるのか? アフリカにその答えはあるのか? 前回の【前編】に引き続き、今回の【後編】でも、米倉教授と森辺氏が熱く議論する。
(構成/執筆: ダイヤモンド社 クロスメディア事業局 宮田和美)
アウェーな異国だからこそ、どう戦うか?
米倉 ここまでは、日本企業が世界の変化の波に乗り、新興国ビジネスのスピードを上げて行くためには、もはやアジアで足踏みをしている暇はなく、むしろ、地理的にも心理的にも日本人から最も遠いアフリカへいますぐ向かうべきだ、という話をしてきました。
ではここからは、私たち日本企業はその新興国ビジネスの頂点とも言えるアフリカに向かい、そこで何を学び、どう戦えばいいのかについて考えたいと思います。
森辺 前編で申し上げたとおり、昨今の日本企業は、海外である程度の成功を収めることはできても、特別なブランドを確立できず、コモディティにもなりきれない、というジレンマを抱えています。日本がこれまでお家芸としてきたプロダクトアウトだけでは、すでに行き詰まっている。
しかし、アップルやメルセデスのような成功しているプロダクトアウトもあって、彼らのスタンスは同じ。つまり、「自分たちはこういう会社で、自分たちがクールだと思うものはこの商品で、嫌いな人はどうぞよそに行ってください」という、ときに強気とも思えるプロダクトポリシー。それにユーザーが酔いしれて、ファンを増やしているわけです。
米倉 アップルやメルセデスの商品には「顔」がある。日本企業もそうした顔のある商品生み出せればいいのですが、それができないのなら、とにかく「マーケットとのコミュニケーション」を一番大切にするしかない。言葉も文化も商習慣も違い、あうんの呼吸もない異国ではなおさら。そういうアウェーな場所だからこそ、綿密なコミュニケーションがものを言います。
そうしたコミュニケーションを積み上げながら、自分たちが持っている資産と、得意技と、めざしたいマーケット、このベストマッチを探していくのが、日本企業が取るべき一番良い選択です。たとえそのベストマッチがすぐには見つからなかったとしても、諦めてはいけません。「うちの商品はこんなに良い商品なのになぜ売れないのか。この国の人が価値をわかっていないからだ」などと嘆く人をときどき見かけますが、答えは簡単です。商品が悪いから売れないだけ。良いか悪いかを判断するのは自分たちではなくて、顧客。顧客が評価して初めて、良い商品と言えるんですよね。ハイスペックなメイドインジャパンにあぐらをかいていてはダメなんです。自分たちの利き手が効かない異国の地だからこそ、マーケットのコミュニケーションが一番大事だということです。
森辺 日本企業はマーケットとのコミュニケーションが取れていないから、日本での「良い」をそのままアジアやアフリカに持ち込んでしまうというプロダクトアウトに陥るわけです。家電の業界では、黒物白物問わず、日本や欧米で評価された高品質、高機能をそのまま新興国に持ち込み、過剰な品質と不要な機能でコストが上がり、必要最低限の機能とそこそこの品質の中国や韓国メーカーに完全に負けてしまいました。
いまあるハードを最大限に使いこなすためのソフト
森辺 それともう一つ、日本のメーカーは、ハードウェアよりも中身、つまりコンテンツやソフトウェアが重要視される時代だということを受け入れなければなりません。わかっちゃいるけど止められない的な、どうしても戦略の土台が得意なハードに寄ってしまうのはもう終わりにすべきです。その昔、アメリカがハードの戦いを日本に譲り渡したように、日本もコモディティ化したハードは、中国にでも韓国にでも譲り渡すべき。もぎ取られるのと、譲り渡すのでは、その後の戦略に天と地の差が出ます。