若年性認知症特有の苦労を描いた
「明日の記憶」

 映画「アリスのままで」の原作は、認知症やうつ病の研究者が書いたベストセラー「静かなアリス」(Still Alice)。その後、邦訳名が「アリスのままで」となった。

 日本でも、若年認知症になっていく主人公の小説が映画化され大ヒットしたことがある。2006年の「明日の記憶」だ。同じ49歳、広告代理店のやり手営業マンを渡辺謙さんが好演。渡辺謙さんは、この6月にブロードウェイのミュージカル「王様と私」でトニー賞最優秀主演男優賞にノミネートされ、「日本人初」と大きなニュースとなった。

 上映時には介護保険制度が始まってグループホームが制度化されるなど、認知症についてかなり知られるようになってはいた。だが、65歳未満の「若年性」は初耳の観客が多かった。普通のサラリーマンでも認知症になる、という衝撃は大きかった。「若年」という呼称に違和感があるが、高齢者の定義が65歳以上なので、その年齢未満を「若年」と呼ぶことにしたからだ。

 若年性認知症の人のケアや生活は、一般の認知症ケアと違い多くの難題がある。記憶障害のため仕事の継続ができなくなったり、転職を迫られて収入源を招く。子どもがまだ学生のため、その教育費や養育費に支障を来きたかねない。生命保険の疾病内容に認知症が明記されていないため、保険金の受け取りが困難な人もいる。

 介護保険のサービスは利用できるが、認知症の通所介護(デイサービス)に行っても周囲は親の年齢に近い利用者で、居心地が良くない。若年性認知症で初期のころは、仕事や日常生活で「できること」がまだ多い。中重度者と一緒のレクリエーションは馴染まない。

「カルチャーセンター的な作業がふさわしい」との指摘も多く、写真撮影や大工作業など得意技を披露できる環境作りが必要と言われる。実際に、若年性認知症高齢者を支援するNPO法人がこうした活動に乗り出している。だが、極めてまれで、どこでもとは言えない。

 ただ映画では、夫婦愛に力点を置きすぎたようで、かなりきれいごいとに近くなってしまった。