介護家族の体験記の増加

 高齢化率の高まりとともに、介護を体験した家族が増え、その体験記や話が映画の原作となりつつある。介護映画の第2類型だ。中でも、普通の市民の体験がベースになり、さらに周囲の知人、住民が映画作りに積極的に関わる「出色」の作品も現れた。

「認知症への正しい理解が広まってほしい」という関係者の熱い思いが込められている。その背景には、「恍惚の人」以来の、認知症になると「意思の通じない怖い人」に変わってしまうという間違ったイメージが未だに根強いからだ。

 2001年に上映された「折り梅」は、主婦の介護体験記「忘れても、幸せ」(日本評論社)が原作である。原田美恵子さんとその義母役に吉行和子さんが出演。

 原作者の住む愛知県豊明市で多くの場面が撮影された。というのも、原作者の知人たちが中心になった「映画化を支援する豊明市民の会」(会員310人)が署名やカンパを集めて、豊明市から制作助成金を引き出した。

 撮影中も、エキストラだけでなく「煮物や漬物意を届けたり、うどんの炊き出しなど町を挙げて手伝った」。こうしたボランティアたちの活動が、映画にリアリティを与えている。

「ホーム・スイートホーム」の第二弾、「ホーム・スイートホーム2 日傘の来た道」も、愛媛県在住の建築家の体験から2003年に制作された。その建築家が所属する地元のボランティア団体「NALC今治」が、今治市での撮影の手助けや全国での上映会の支援に乗り出した。

 親の介護のため、エリート社員の息子が東京から帰郷し、地域の仲間も支援に加わるという内容だ。「女性だけが介護の担い手とする考え方を変えたい」と、前作に続いてメガホンを取った栗山富夫監督は強調していた。

 英国映画で2002年に日本で公開された「アイリス」も体験記に基づく。著名な作家、アイリス・マードックが認知症になっていく様子を文芸評論家の夫が綴った。在宅介護に追われる夫の細やかな気遣いに心打たれるラブストーリーである。その巧みな演技で夫役のジム・ブロードベントがアカデミー賞助演男優賞を得ている。