肝心な部分は自治体に丸投げ!
原発事故は「大量殺人罪」だ

広瀬 7月31日、東京第五検察審査会は東京電力福島第一原発事故をめぐって、東京電力の勝俣恒久、武藤栄、武黒一郎の3人について、原発の安全対策において極めて高度の注意義務があり、想定外の事態も起こり得ることを前提とした対策を検討しておくべきものだとして、業務上過失致死傷の罪で強制起訴するべきだとする2度目の議決を下しました。
 つまり、これは大量殺人罪で有罪だという判断なのです。

田中 当然の判断でしょう。5層というのは、国民の健康と安全に関して最も重要な部分ですが、福島原発事故があってもなお、このことを国も規制委員会も自治体に丸投げしています。いまその問題を真剣に考えて取り組んでいるのは、泉田裕彦知事の新潟県くらいでしょう。

広瀬 川内原発の場合、「30キロ圏内の周辺自治体は説明会を開け」と言っているのですが、それもやっていない。薩摩川内市の岩切秀雄市長が再稼働に賛成しているだけで、周辺自治体は猛烈に反対しています。

田中 避難計画も、実際は被害者となる住民まかせです。

広瀬 フランスでは、総員退避に対処するためのチームができています。
 原子力発電所の敷地内に基地を設置し、国内のどの原子力発電所でも24時間以内に事故対応を展開できるように訓練を積んでいます。

 しかし、本当のことを言うと、避難対策というのはナンセンスです。
 福島を見ればわかります。原発事故が起こって避難する事態になれば、自宅も土地もすべて失い、戻ることができません。
 だから川内原発の再稼働反対運動で、当初、避難について話すこと自体に、私は懐疑的でした。

 それでも、無関心な周辺住民の人たちに「避難が大変だ」と大声で言うことによって、誰もが原発再稼働に意識を持ってもらうことができました。
 原発について関心のなかった人も、「避難できるか」と聞かれて、ビックリして危険性について考え始めたのです。そのために、言い続ける必要があります。

田中大事故発生時に対応するための4層の審査はいいかげんで、その上、避難の5層は自治体まかせ。自治体は避難計画をつくるのに四苦八苦しています。

広瀬 それなのにメディアは「一応、原発の安全性が高くなった」かのように報道しています。記者たちがまったくわかっていません。
(つづく)