中国は民主主義で統治できるのか

加藤 唐突な質問ですが、北岡先生は、中国は民主主義では統治できないと思われますか。

北岡 先ほど申し上げた通り、1つは連邦制だと思いますが、いくつかの省は1億を超え、多くは5000万を超えます。中国は伝統的にそれをコントロールしてきたわけですね。皇帝の権力を脅かさないように、総督巡撫はその省の人間以外を起用しました。

 日本は知事選挙に地元出身者を起用します。これは大きな違いです。すなわち、これは地方に大きな独立性を与えるが、地方に根を張って中央に歯向かうことは許さない制度です。要するに、昔の封建制です。封建制か郡県制かという問題です。

 昔の封建制を再導入することと、共産党一党支配は矛盾するか。矛盾しなければ、そこに解がありそうなような気もします。加藤さんは、どう思いますか。

「中国でも、歴史的に中央集権か地方分権かで揺れてきました。一筋縄にはいきません」

加藤 私もそう思います。日本における大手株式会社のような仕組みですね。いろいろな畑を経験させて、その中で人格や能力などあらゆる面を考慮して、結果的に上に行く人間が消去法で残っていく。

 省長は生え抜きの人間、そして地元の民意をある程度汲み取った人間を配置したうえで、党書記に関しては基本的に中央の任命制にするような仕組みは実行可能性があると思っています。また、中央委員会、政治局、政治局常務委員のいずれかに市民社会としての民意が反映されるようなシステムを入れる。そのうえで、制限的ではあるけれども、一定程度、民主的な政治を機能させるやり方はあると思っています。

北岡 もちろん、中国に関しては、やはり難しい点が多々あります。よく言いますが、中国は欧州とだいたい同じ面積です。米国も同じです。欧州は早くから国が分かれていて、米国は連邦制。でも、中国は1つですよね。中国は連邦制にならないのかなと思います。

加藤 以前、北京である共産党の幹部の方々とかなり突っ込んだ議論をする機会がありました。そのとき、「連邦制をお考えになっていますか」という質問をぶつけました。すると「その制度は学んでいるし、あらゆる可能性を考えたうえで、この国が統一されていくようにしかるべき措置を取る」ということを言っていました。ただし、彼らは絶対に“連邦制”とは言いません。西側を真似たかのように見られることを嫌うからです。

 中国でも、歴史的に中央集権か地方分権かで揺れてきました。一筋縄にはいきません。現状としては、習近平総書記に権力が集中しているなか、政策遂行は中央集権的になっているように見えますが、李克強総理が担当する土地改革や戸籍改革、都市化政策や三農問題対策などを抜本的に推し進めるためには、ある程度の権限を地方に移譲し、地方の積極性や機動性を生かすようなインセンティブは不可欠だと考えます。

 次回更新は、9月10日(木)を予定。