日本には47の都道府県があるから、理屈のうえでは、それと同じ数の「県民性」が存在することになる。しかし、青森県や長野県のように、複数の県民性(「藩民性」と言ってもいい)が共存する県もあり、全部合わせるとおそらく60ほどに達するのではなかろうか。
ただ、兵庫県のように、少なく見積もっても、5つもの気質があるなどという県はほかにない。これはひとえに、兵庫県の地理的な位置によっている。
地図を見るとわかるが、この県の北端は、冬になれば雪が舞う日本海に面し、交通の便もあまりよくない。一方、県の南端は淡路島で、こちらは温暖な気候で知られる瀬戸内海に浮かび、古来海上交通の要でもあった。これだけ考えても、同じ気質が育まれるとは考えにくい。
また、その間の、北部から中央部にかけては、経済的にはあまり恵まれない山間地帯である。その南側から瀬戸内海沿岸にかけては、平安朝の時代から開け、平清盛の時代には都も置かれた神戸だ。かと思うと、県の東部に暮らす人たちの感覚はほとんど大阪に近い。尼崎市など、電話の市外局番が大阪市と同じ「06」だが、そんな些細な事実にもそれが象徴されている。
ハイカラでおしゃれな神戸人と
庶民的な大阪人は水と油のような間柄!?
つまり兵庫県は、県民性の“見本市”というか、私たち日本人が持つ、典型的な気質がほぼそろった特異な県なのだ。そして兵庫県人は、自分たちの県がそうした「なんでもあり」のエリアであることを、長い歴史のなかで十分に心得ている。全体としては鷹揚な人が多いから、さほど深刻に悩む必要はない。
唯一気をつけたいのは、神戸を、同じ関西だからといって、大阪とひとくくりにして扱わないほうがいいという点だろうか。プロ野球の老舗球団「阪神タイガース」があるせいか、他地域の人は、大阪と神戸をつい同一視しがちだが、これはしばしば神戸人の気持ちを逆なでしてしまうようだ。
ハイカラでおしゃれ、先進的な神戸人と、庶民的で格好をつけることを重要視しない大阪人は、やはり水と油のような間柄なのかもしれない。
◆兵庫県データ◆県庁所在地:神戸市/県知事:井戸敏三/人口:559万7513人(H22年)/面積:8396平方キロメートル/農業産出額:1431億円(H19年)/県の木:クスノキ/県の花:ノジギク/県の鳥:コウノトリ
<データはすべて、記事発表当時のものです>