中小のソフトハウスがバタバタ倒産
今のゲーム業界は最悪の状況 

 大手が悲惨なら、中小も当然無事では済まない。事実、福岡のソフトハウス、シングは3月1日、負債総額2億5600万円で破産手続きに入っている。シングは、任天堂発売「アナザーコード:記憶の扉」(ニンテンドーDS用) などの開発元として知られ、業界内でも”勝ち組ソフトハウス”と見られていた。それだけに、「あのシングまでが」と絶句した業界人は少なくない。 

カプコンの稲船敬二常務執行役員

  この倒産は、カプコンの常務執行役員・稲船敬二氏によると、氷山の一角でしかないようだ。「今のゲーム業界は最悪な状態。年があけてから、中小のソフトハウスがバタバタと倒産している。私も最近よく泣きつかれますよ。カプコンさん、なんとかしてくださいよって」。

 この発言は、3月6日に福岡市で開催された「第2回ゲームフロンティアin福岡」(主催・福岡ゲーム産業振興機構)での基調講演のもの。人材育成を目的としたイベントでは、それなりに夢に包まれた話が語られるものだが、語られた内容といえば、「今のゲーム業界は最悪の状況」という言葉に象徴される悲惨な話ばかりだった。

 現在のゲーム業界の悲惨な状況の原因について、不景気を挙げる人は多い。確かに、現在の不況は、100年に1度の不景気の影響も受けてはいる。だが、今回の場合もそれは結局のところ外部要因でしかない。主要因はゲーム業界特有の構造にある。

 ゲーム業界の景気と、家庭用ゲーム機、いわゆるハードの盛衰には密接な関係がある。程度の差こそあれ、ハードの盛衰とともに、 業界は栄え そして不景気になった。この状況を、任天堂が1983年に「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」を発売して以降、ゲーム業界はずっと繰り返してきたといっていい。

 業界の不景気をニューディール(新規巻き直し)するかのように、ファミコンに続いて次々と新ハードは発売されてきた。任天堂のスーパーファミコン、ソニーのプレイステーションシリーズ、そして現在はニンテンドーDSと、それぞれの大ヒットとともに業界は潤い、そして衰退した。その繰り返しを業界の歴史としてとらえることは、あながち間違ってはいないだろう。

 なぜ、ハードメーカーだけが業界の景気をニューディールできたのか。そのヒントを旧大蔵省の金融業界に対する護送船団方式から得ることができる。

かつての日本の金融界と同じ
ゲーム業界の護送船団方式が崩壊

 日本の金融業界は1996年の金融ビッグバンを迎えるまで、旧大蔵省による護送船団方式の下に置かれていた。つまり、旧大蔵省によって金融機関は破たんから守られていたわけだが、旧大蔵省をハードメーカー、金融機関をソフトメーカーと置き換えると、そのままゲーム業界の話になる。

 ハードメーカーは市場拡大を目指すために、有力ソフトメーカーに自分たちのハード用にソフトを作ってもらうようお願いする。だが、一方のソフトメーカーはハードに参入する際、ロイヤリティーを支払わねばならないため、様々な見返りを要求する。すると結果的に、ハードメーカーがソフトメーカーを守る護送船団が誕生する。
この護送船団方式の好例が、ソニーのPS、PS2期(1997年~2004年)で、この時期にソニーとともに業績を飛躍的に伸ばした日本のソフトメーカー、ソフトハウスは多い。いわば、”プレイステーション”というエコシステムの下で業界各社は潤っていた。そのため、PS2の後継機「PS3」でも、同じようなビジネスモデルを望んだソフトメーカーは多かったのだが、残念ながらそれはうまくはいかなかった。

 それでは、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」でがんばればいいかというと、話はそう簡単ではない。Wiiで儲かっている日本のソフトメーカーの話は聞こえてこないからだ。

 たとえば「モンスターハンター3」を投入したカプコンですら、実質売上が100万枚も超えていない。この状態は、PS3の護送船団が壊滅状況のソフトメーカーからすれば、死活問題である。