値上げの最大の目的は時間を作ること
コンフォートゾーンが変わってきたら、次に何をすべきでしょうか。「値上げによって新たに生まれた時間」を、今ではなく将来の、もっと先の未来のための投資に充てるという思考の変革です。
この思考の変革を、私は「経営のサイクルを伸ばす」という表現で、顧問先の社長やスタッフに進言しています。競合他社が目先の目標しか持っていない時に、もっと先の状況を目指して準備を始めると、ある時点から圧倒的な独り勝ちの状態となりますが、そのための準備を進めます。
値上げによって得られた売上と利益の増加によってもたらされる最大の価値は、将来を見通して他社を圧倒する準備のための時間的な余裕を企業が得ることです。
たとえば、50%の値上げによって同じ売上を目指すのであれば、利益はもっと上がるうえに販売回数が減り、顧客の数も減るので、工事会社の場合は現場の数が減るし、サービス会社の場合はサービスの機会が大幅に少なくてよくなるのです。
工事やサービスをする時間が半分になるので、残り半分の時間が余るわけですね。
もし、3倍の値段で販売が可能になったら、利益は当初よりもっと増えるうえ、3分の2の時間が余るということです。
これまで、値上げこそが正しい経営と何度も言ってきたので、このことはよく理解していただいていると思います。つまり、値上げによって多くの時間が企業に、経営者自身に、新たにもたらされるのです。
経営者は、「新たにもたらされた時間」で何をしたらよいのでしょうか。
もちろん、値上げした分時間ができたのであれば、その時間をもっと目の前の販売に費やすことも可能です。しばらくはそれも正しいといえますが、少し落ち着いたらその時間を何に投資すべきかを、ちょっと冷静になって考えるべきです。
目標は、組織として経営のサイクルを伸ばし、今日の行動が今日の利益を生むと同時に、未来の売上も生む経営を作ることです。
値上げに対する正しい考え方を知り、実行していただいて、収益・利益を向上させ、目指すはこの未来を構築するための取り組みやしくみ作りです。
この取り組みは顧客やライバルを一切気にすることなく、経営者自身の判断でスタートさせ、進めていくことができます。
そして、周りがあなたの会社の取り組みに気付いた時には、あなたの会社は他社の努力のはるか先に行った存在、追いつけない存在となっているのです。