――過去の半世紀、人類は、穀物の面積当たりの収量(単収)をアップさせることで、人口増加による食料の需要増に対応してきました。しかし、2050年までに世界人口は90億人に膨れ上がる、との国連推計もあります。今後は、単収の改善だけでは、90億人の食料需要を満たしていくのは難しそうです。どうやって、食料の増産にどう貢献していきますか。

 十分な生産量と品質を兼ね備えた食料の確保は、イノベーションが解決してくれるでしょう。その代表例が、遺伝子組み換え作物や農薬です。

 また、アフリカなどの発展途上国では、まだまだ農業分野の最新鋭技術が浸透していないので、収量アップの余地が大きいです。同時に、こうした発展途上の地域では、小規模農家の組織化、農産物や資材を輸送するインフラの未整備、政府の汚職などの課題解決が欠かせません。

――農薬が効かない“スーパー雑草”の大発生が世界中で問題視されています。この問題にどう取り組みますか。

 従来の除草剤が効かない雑草が増えて、収穫に悪影響が出ています。当社では近年、除草剤分野の研究開発を強化してはいます。もっとも、地球規模で拡大している問題を一民間企業が個別に解決するのは非常にハードルが高いです。そのため、当社は、オーストラリアの穀物研究開発公社(GRDC)と共同で、雑草駆除に関するプロジェクトを立ち上げています。

――依然として、遺伝子組み換え食品に根強いアレルギーを持つ消費者は多いです。例えば、消費者の懸念が強いため、商用生産が始まっていない「小麦」についてはどのような見識をお持ちですか。食料問題の解決に役立つと考えますか。

 確実に役立ちます。遺伝子組み換えの種子を扱っている当社は、これまでも社会の声に注意深く耳を傾けてきました。強調したいのは、遺伝子組み換え作物が導入された1990年代初頭から、健康への影響を心配する声がありますが、何ら悪影響は出ていないということです。遺伝子組み換えへの懸念は、はっきりとした事実に基づいていません。根拠が不明確なまま、不安が増幅しているのです。

 製薬の分野では、遺伝子組み換え技術が社会で“許容”されています。にもかかわらず、農業分野ではそうなっていません。農業分野で遺伝子組み換え技術の活用が進めば、“スーパー雑草”の問題の解決に役立つだけでなく、農薬など他の生産資材の投入を減らせるので農家や消費者にとっても大きなメリットになります。また、上手くいけば、メコンデルタなどに見られる塩分の高い土壌など、生産条件が苛酷な土地での穀物栽培が可能になります。

 繰り返しになりますが、遺伝子組み換え技術は、増え続ける世界の食料需要を満たすために必須の技術です。賛成、反対の双方の意見に耳を傾け、科学的な知見に基づく議論を続けることで、消費者や農業関係者の理解を深めることが重要です。