会社勤めを辞めた時点で、サラリーマン収入の部分がごっそり消えてなくなるからです。退職した時点で個人事業分の収入だけになりますので、所得税や住民税は再び低くなります。そこから頑張って税率20~23%を超えるのが見えてきた時点で、法人を設立するのがベストではないかと思います。
最低資本金制度が撤廃されたことで、いきなり会社を設立する方もいます。とはいえ、法人には諸々の費用がかかります。株式会社設立には、少なくとも登録免許税や定款認証費用などで25万円ほどの設立費用が必要です。たとえ会社が赤字でも、法人住民税の均等割分7万円は納付する義務があります。税理士事務所と契約して決算書作成や申告手続きなどを任せた場合は、少なくとも20万~30万円はかかるでしょう。
個人のときは安かった国民年金や国民健康保険の保険料も、法人を設立すると、厚生年金と協会けんぽに切り替わって、法人負担分と本人が負担する分の両方が法人と個人の財布から出ていくことになります。サラリーマンのときは会社負担分は関係ないですが、自分株式会社を立ち上げた場合は、会社負担分も自分が支払っているのと同じです。
よほど売り上げや利益が安定していないとデメリットのほうが多く、法人は単なるお荷物になりかねません。個人事業主としてある程度実績を積んでから設立するくらいがちょうどいいでしょう。
法人はいったん設立すると、簡単に解散や清算もできません。中小企業総合事業団「小規模企業経営者の引退に関する実態調査」によると、従業員0人の会社でも廃業するのに50万円以上かかっているケースが4割以上もあります。法人設立は個人事業主として売り上げや利益が十分に安定してからでも決して遅くはないのです。