「彼らが卒塾し、ワーカーズコープの清掃現場などに行って、時給800円くらいの安い賃金で仕事を請け負っても、人に感謝されたり、仲間同士で助け合う仕事を実感したりしている。働くって、対価のためだけではない。人の心を充実させるものは、経済的な問題だけではないことを痛感するんです」

「今日はお休みなの?」
他人の目線が気になり昼夜逆転

 小澤さんは、国立大学の付属中学校に入学したものの、中2~中3のときは不登校になり、ほとんど保健室にいた。廊下を曲がるときは直角歩行を命じられるような厳しい管理教育への窮屈感があったという。その頃から「社会のレールからドロップアウトしてしまった」と振り返る。

 それでも、コンピュータ関係の会社に社員として入り、老舗の電算会社などに出向。その後、大手の通信企業にも2年くらい勤めた。

 ただ、仕事の内容は雑用が多く、面白いと思ったことはなかった。こんなことずっとやっていても、スキルが身につくわけがない。将来、どうなるのか不安だった。

 今にして思えば、「仕事なんだから、給料をもらえるだけありがたい。我慢しよう」という選択肢も当然あった。

 しかし、そのときは辞めようと思い、そう行動した。すでに、独学でインターネットのサイトを見ながら勉強して、プログラムを作れる程度にまでなっていたことも、会社を辞める後押しになった。

 退職後は、ハローワークにも通って、開発系の会社の仕事を探し続けた。しかし、資格があるわけではなく、独学で通じるほど、現実は甘くない。なかなか就職できないでいるうちに、家から出なくなった。

 1人暮らしのアパートの生活費は、実家の親から仕送りで賄っていた。しかし、数ヵ月もすれば、生活が荒んでいく。

 買い物などで外を歩くと、息苦しい感じがして、気持ちが悪くなった。その頃から、「人には会いたくない」と思うようになった。

 外に出なくなるにつれ、インスタントの冷凍食品を買いだめするようになる。100円ハンバーガーなども大量に買って、冷凍にしておいた。そんな食生活の悪さも影響したのかもしれない。

 しかし、親に「引き払って戻ってこい」と言われ、結局、引き戻された。

 ネットを使って、設定の作業などを自宅で請け負う仕事に登録したが、数千円の仕事が月に1件くらいしか来ない。ネットカフェで、アイデアなどの話をしたが、採用されなかった。社会に受け入れてもらえない。すねた感じになっていた。