給与を高くすれば欲しい人が集まる
というのは間違い

 私は中小企業の採用面接コンサルタントとして、面接時の留意点やアドバイスを求められたり、面接の運営・セッティング指導、あるいは直接面接に立ち会うこともありますが、間違った採用面接を行っている企業をたくさん見ています。

 中小企業が今の人材獲得競争に勝つためには、これまでの採用方法を改善しなければなりません。中小企業が取り組むべきは、受け身の採用ではなく、攻めの採用です。

 来てくれる人ではなくて、欲しい人を採用する。これからは感覚や相性だけで採否判断せずに、もっと戦略的に行うことが重要だと思っています。

 本当に優秀な人材で、ずっと働き続けてくれる人材を採用するには実は「技術」が必要なのですが、日本には採用面接において、理論に基づいた方法やマニュアルが確立していません。入社したい学生は、マニュアルを読み込んで「就活」するのに、採用する側の活動にはそういったものがない場合が非常に多いのです。

 人材獲得に苦しむ企業を支援したくても、私が直接お話しできる会社はわずかです。もっとたくさんの中小企業が採用に成功してほしい。その思いから独自の採用活動(採活=サイカツ)メソッドを開発、整備し、全国初の「採用面接士資格」を立ち上げました。

 採用面接のプロを養成することで採活力の向上を図るのが目的ですが、それが結果的に中小企業の活性化にも寄与すると考えています。

 採活力とは、面接テクニックに限ったことではなく、募集活動から、面接・選考だけに留まらず、内定辞退対策、入社後のフォローまでを含めた戦略です。

 たとえば、応募者を増やすにも中小企業ならではの創意工夫が必要です。やみくもに間口を広げても、人を集められるわけではありません。

 採用を“釣り”にたとえれば、もちろんいいエサで誘うことは大切です。しかし、エサを狙う魚がいない場所で釣りをしても意味がありませんよね。大事なのは、釣りたい魚がいる場所を狙ってエサをまくこと。それは採用も同じです。みなさんはエサをおいしくすることだけを考えて採用活動をしていませんか?

 エサ、たとえば「給与を高くすれば応募は増える」とたいていの会社は考えます。他にも賞与を増やす、福利厚生を手厚くするなど、いろいろ方法はありますが、実は、一番良くない方法が給与を高くすることなのです。それは最後の手段といってもよいと思います。(本書ではそのあたりも詳しく説明しています。)

 また、景気拡大による人材確保を背景に、複数の企業から内定をもらう学生が増えています。内定を出しても、もっと上の会社を探して就活を続ける学生は大勢います。さらにいえば、優秀な人ほど多くの会社に受かったりします。彼らがもっといい会社に就職すると、内定を辞退される会社もそれだけ増えるわけです。

 加えて、近ごろは内定承諾も親に相談、内定辞退の理由も親の反対というケースが少なくありません。子どもは親離れできず、親は子離れできない親子が多いように思います。

 親御さんの主観で判断されると、いくら上場企業、優良企業でも、自分が知らないというだけで候補から外されてしまう。求人倍率の上昇で大手志向が高まっている今はなおさらです。ですから親御さんのフォローも考える必要があります。

 こうした就職活動の動向や就活生の事情も敏感にとらえ、内定辞退の防止策や親御さんへの対応なども戦略に織り込みながら人材獲得に励まなければなりません。