日本テレビ、ソニーを経て、LINE(株)CEOを退任後、動画メディア「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮さんと、集英社を飛び出してフリーとして「新しい働き方」を追求する安藤美冬さんの対談が実現した。自分のキャリアと人生を切り拓くために、20代のいま、何をすべきか? 20代でおおいに迷ったおふたりに、『シンプルに考える』(森川亮、ダイヤモンド社)、『冒険に出よう』(安藤美冬、ディスカバー21)をもとに、語り合っていただいた。 (構成:田中裕子)
自分の欠点を見つめる先に、道は広がっている
森川亮さん(以下、森川) 『冒険に出よう』のなかに、「どのような働き方をしたいのか。それを導き出すために、まず『やりたくないこと』を明確にすることからはじめた」とありました。僕もその考え方には賛成ですが、安藤さんは、なぜそう考えるようになったのでしょうか?
安藤美冬さん(以下、安藤) 集英社を退職して独立するときに、「やりたいこと」がわからずに悩んだことがきっかけです。私はいろいろなことに目が向いてしまう性格で、それが長い間コンプレックスでした。何にでも手を出すけれど、その道で大成するわけはもない。会社に入ってからも、ファッションだったり、マンガだったり、いろいろなことに興味をもって追求しましたが、「誰よりも詳しい」と言えるものは何ひとつない。いよいよフリーになるときに「本気で取り柄を見つけないとダメだ」と焦ってしまって……。
森川 たしかに、フリーランスでジェネラリストという人は、あまり聞いたことがないですね。
安藤 そうですよね? 好きなことはたくさんある。でも「これ」と決められない。悩みに悩んだとき、「まずは『やりたくないこと』を明確にしてみよう!」と思いついたんです。
森川 なるほど。たしかに、「やりたくないこと」を挙げることで要素をそぎ落としていって、消去法的に「やりたいこと」を探し出すというのはひとつの手ですよね。安藤さんの「やりたくないこと」は何だったんですか?
安藤 いろいろと書き出して考えた結果、「営業をしない」「肩書きをひとつに決めない」「スーツを着ない」の3つに決めました。それが決まったうえで世界中の新しい働き方を調べるうちに、いまの私の働き方に影響を与えた「ポートフォリオワーカー」や「パラレルキャリア」という考え方に出会ったんです。そして、だんだん自分の進むべきが見えてきたような気がします。
森川 なるほど。
安藤 言ってみれば、私には「全部中途半端」という欠点があったからこそ、自分の進みたい道が見えてきたとも言えるんです。だから私、欠点にこそ、その人の宝物が眠っている気がしてならないんです。世間では「欠点には目をつぶって長所を伸ばせ」とよく言われますけど……。
森川 たしかに、大人になって欠点を伸ばすのは非効率ですからね。むしろ、視点を変えたほうがいい。欠点をどうにかしようとするんじゃなくて、その欠点を生かす方法を考えるというか……。
安藤 そうですよね。そのためにも、自分の欠点を見て見ぬふりするのではなく、しっかりと向き合うほうがいいと思うんです。ほんとうの自分は、欠点の中にひそんでいると思うから。
森川 ただし、自分の欠点を責めてもしょうがない。それをいかに生かすか。そんな視点で、向き合うといいでしょうね。ところで、フリーとして進む道が見えてからは、順調にやって来られたんですか?