米国のアジア太平洋戦略における柱
参加国は中国の加盟も歓迎の立場を

 戦略的意味合いも極めて大きい。TPPは米国のアジアへの「ピボット」あるいは「リバランシング」政策の、非軍事的側面での最大の目玉であるとされる。オバマ政権の米国は、安全保障面では日本、韓国、豪州、フィリピンなど同盟国との安保関係の強化や、インド、ベトナムなどとのパートナーシップの強化を図ってきた。

 経済面では、TPPが米国のアジア太平洋における存在を強化する仕組みと考えられている。先に述べたとおりTPPは高度な自由主義市場経済ルールであるが、アジアの多くの国が参加することによって、ともすればマーケットの大きさの故に国際社会とは異なるルールに走りがちな中国を、けん制する役割を果たし得るのだろう。

 中国もTPPについては複雑な思いがあるようである。2001年にWTOへの加入に踏み切ったように、将来経済改革が進んだ時点で加入を希望するということになるのか、それとも米国主導の秩序に組み入れられるのを嫌い、むしろ「一帯一路」といった中国を中心とする秩序作りに邁進していくのか、現時点では見通すことはできない。

 ただし、加盟国は中国を疎外するのではなく、同国の加盟も歓迎するという立場を維持し、中国自身が国有企業改革など国内経済改革を進めていくよう慫慂することが望ましい。

米大統領選が議会承認に影響
選挙終了まで凍結との見方も

 このような経済的及び戦略的意義の大きいTPPであるが、果たして近いうちに発効することになるのだろうか。水準の高い自由貿易協定であるが故に、各国の既得権益を壊す度合いも大きく、一部の反対は根強い。特に米国では来年の大統領選挙に向けて議会が極めて混乱した状態にあり、議会承認が危ぶまれている。

 TPPの実質合意は、米国行政府が6月末に議会から貿易促進権限(TPA)を得た結果、取りまとめが可能となった。TPAは政府が他国と合意した自由貿易協定を議会に諮る際、合意内容に修正を加えることを認めないものである。TPAがないまま交渉をまとめたならば、議会が後にありとあらゆる修正を行うことが自明であったが故に、交渉参加国も最終的なカードを切らなかった。通常であればTPAのもとで議会の承認はそれほど困難ではない。しかし今回は事情が異なるようである。