今は問題なく返済できても、
老後は年金収入の半分がローン返済に!

 Aさんが提案されたプランのリスクを検証してみよう。

 【モデルルームで提案されたプラン】
 ローン借入額:4500万円
 借入条件:変動金利0.775%、返済期間35年(完済時77歳)
 毎月返済額:12万2364円

 管理職になったAさんの年収は1000万円を超えている。当面は、月々12万円の返済は難しいことではない。しかし、定年後はどうだろう。

 サラリーマン(男性)の年金は、年200万~240万円くらい。企業年金が上乗せされたとしても、期間が限られているケースがほとんどだ。仮に、営業マンが言う通り、繰り上げ返済をせずに「ぼちぼち」返していくと、年金収入のうち半分前後がローン返済に回ることになる。ローン返済後の残りだけでは生活できないので、退職金など老後資金を取り崩すことになる。

 65歳以上の高齢者の収支は、住宅ローンの返済がなくても年間マイナス60万円くらいなので、それに返済分の約150万円を加えると、年210万円を貯蓄から取り崩す計算となる。10年間続くと、2000万円以上の貯蓄が確実になくなる。貯蓄が大きく減った頃に死亡すると、遺された妻のその後の生活はかなり厳しいものとなるだろう。Aさん死亡後、妻は遺族年金収入となり、貯蓄が底をつくと、下流老人になる可能性はゼロではない。「少ない年金×ひとりだけの年金」は、貧困に陥るきっかけとなるのだ。

 そもそも、亡くなる年齢は自分で決めることができないのだから、「早く死亡するとローンがなくなるから、あわてて返さなくていい」なんていう考えは、論外なのである。

自分にとっての最長返済期間は
「65歳-ローン返済開始年齢」

 定年時に退職金で一括返済するプランを提示するため、60歳時残高を試算してみたところ、約2485万円(当初10年間は金利が変わらず、11年目以降2.5%と仮置き)もある。金利上昇を楽観的に見ても、これだけの金額が残ってしまう。

 これから子どもの教育費負担が増え始めるため、子どもたちが社会人になるまでは繰り上げ返済に回す余裕はない。勤務先の予想退職金は3000万円に満たないうえ、一部が確定拠出年金制度にスライドしたため、運用次第で金額はもっと減るかもしれない。