田房永子さんは、自身の経験を描いた『母がしんどい』に続き、毒親の元で育った人たちへの取材をまとめたコミックエッセイ『うちの母ってヘンですか?』(2014年)、『それでも親子でいなきゃいけないの?』(2015年)を刊行。これらの中では、「髪型や服装の強制」「進路・進学先の強制」「友人関係への過剰な干渉」「親の感情で子どもを振り回す」「過度な干渉と無関心を交互に繰り返す」「思春期にブラジャーを買い与えない」「無視」などの例が挙げられている。

 『ゆがみちゃん』で描かれているのは、「子どもの意志に反する宗教の強要」「子どもの頃から日常的に『ブス』『かわいげがない』『性格が悪い』と罵る」「兄には充分に与えている金銭を妹には与えない」「『殺してやる』という暴言を繰り返す」など。

 暴力に関するケースは少ない。中には「中学校の校門前で、教師が見えている前で母親から暴行を受けた」「大学受験の当日に母親が角棒を振り回しながら追いかけてきた」といった例もあるが、多くの場合は精神的なプレッシャーを与えるものだ。身体への暴力は、最近では「虐待事件」と見なされることが多いからだろう。

“毒親”の子どもを
最も苦しめるのは周囲の無理解

 昔は「親のしつけ」として見過ごされることもあった暴力による虐待は、最近では事件化することが増えてきた(それでもまだ虐待死に至るまで見過ごされてしまうことがあるが)。一方で、「毒親」に見られるような精神的な抑圧については、家庭内暴力事件よりもさらに周囲が介入しづらいという特徴がある。子どもが訴えても、「反抗期」「どこの家にもあること」と言った言葉で片づけられてしまうこともある。精神的な抑圧は、子どもに自己否定や自責感を植えつけ、将来にわたって苦しめる可能性があるにもかかわらず、である。

 『ゆがみちゃん』では、「毒親に対する無理解」について、次のように書かれている。

「世間には、『家族はすばらしい』と無条件で称賛する風潮があります。フィクションの物語が『子どもを愛さない親なんていない』と吹聴することもありますが、現実には子どもを愛せない親、間違った愛を押しつける親が存在しています」