しかし、そうしたアイデアが質の高いものであることはまずない。アイデアの質を高めるには、まずアイデアの総量を増やしたほうがいい。そうでない限り、そのアイデアはパッと直感で出てくるようなレベルを超えることはないからだ。
次第にリーダーは内心慌て始める。
自分たちがつくろうとしているサイトが、わざわざ新たにつくるほどの価値があるのか、よくわからなくなってくるからだ。
自分たちがやっているのは、「きわめて凡庸なアイデア」を補強する情報集めでしかないと気づいてしまったのである。
そこでリーダーは、もっと質の高い結論仮説を何とかひねり出そうとするが、時すでに遅し。残された時間を考えると、新しく情報収集をしている場合ではない。仕方なく、メンバーが集めてきた情報を再度読み込み、うんうんと唸る。
……が、新しいアイデアは出てこない。
「結論仮説の立案」が先行しなければならない
これは当然と言えば当然である。
メンバーが集めてきたのは、リーダーが潜在的に持っていた結論仮説を裏づけるための情報だったはずだ。
これをもとに別の仮説を考えるというのは、同じ部品を使ってまったく別の組み立てを考案するということにほかならない。それももちろん不可能ではないが、こんなことができる機転があれば、そもそもこんな事態には陥っていないだろう。
その結果、数ヵ月後に出来上がってきたのは、誰でも思いつきそうな「よくある感じのウェブサイト」だった。もちろん、さほどPV(ページビュー)が伸びることもなく、1年後にはひっそりとこのサイトは畳まれることになる。