二子玉川駅東口再開発は、東急電鉄30年の悲願

 二子玉川RISEの開発主体は「二子玉川東第二地区市街地再開発組合」ですが、その中核は東急電鉄です。

 戦前から続いた「二子玉川園(遊園地)」を閉園(1985年)する以前から、東急電鉄はずっと駅東口再開発の機会をうかがってきました。しかしそのためには、駅東口の地権者の同意、行政の後押し、そして景気向上の3要素が不可欠でした。

 それらが揃うまで、その広大な跡地(*6)(の一部)には非恒久施設がぽつぽつと置かれていました。ナムコ・ワンダーエッグ(1992~2000)、いぬたま・ねこたま(1995~2006)、ミズノフットサルプラザ、釣り堀、パターゴルフ場、テニスコート、住宅展示場……。

 景気の低迷に加えて、一部の地権者や住民の反対運動などもあり、再開発計画は遅々として進みませんでした。

 しかし2000年にはその開発が、東京都と世田谷区から「都市計画」として認められ、2007年にようやく着工されます。総事業費として1435億円(計画値)、道路整備・事業補助金など行政側も数百億円を投入する(*7)一大プロジェクトのスタートです。東急電鉄としても、失敗したでは済まされない乾坤一擲の大勝負であったでしょう。

 膨大な人材と資産・資金をつぎ込んでも、そのリターンがあるかどうかはわかりません。でも30年かけて実現にこぎ着けました。

 そこまで東急電鉄が、この再開発にこだわった理由はなんなのでしょうか?

東急電鉄はなぜ、高収益なのか?

 国内大手私鉄の経営指標を比べると、東急電鉄(正式には東京急行電鉄)の優位が目立ちます。山手線内を支配する東京メトロを除けば、その鉄道事業収入は約1500億円で東武に次ぐ2位、輸送人員、乗車効率(*8)、そして客車走行1キロ当たり旅客収入は断トツの1位です。

出所:2014年度の各社有価証券報告書より三谷作成

鉄道事業は基本的に固定費ビジネスです。収入は旅客数に比例しますが、コストはそれとは関わりなく、保有・運行する線路、駅舎、電車編成で決まり、旅客数が多少上下してもほぼ固定費となっています。

 客車を1キロ走らせるのにかかるコストは各社で大差はありません。しかし、東急電鉄はそこから932円を収入として上げ、他社は702円以下です。その差はそのまま「利益の差」となるでしょう。

 東急電鉄はなぜ、これほどの収入を上げられるのでしょうか? 近鉄や小田急のように有料の特急電車もないのに。キロ当たりの運賃も最低水準(つまり安い)なのに。

 その訳を、東急電鉄の中核路線である東横線で見てみましょう。

*6 二子玉川園の敷地の一部は、1968年から東急自動車学校として使われていた。
*7 見返りとして東急自動車学校跡地は世田谷区が収得し、二子玉川公園として整備した。
*8 乗車効率=旅客キロ÷客車定員キロ。電車の定員は「座席と立席」で数えられ、百数十名程度。