地方銀行の再編が止まらない。昨年11月に、関東・九州地方で県内トップバンクが絡む経営統合が相次ぎ表面化。その1年後の今、関東では再び大型再編の号砲が鳴り、九州でも新たな再編の煙が立ち上り始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
「常陽・足利連合が再編の新たな受け皿に名乗りを上げれば、関東地銀の争奪戦はさらに激化する」。地方銀行界に飛び込んできた、新たな再編劇。その第一報を聞いた関東地方の地銀幹部は、その先の展開を見据えて考えを巡らせていた。
その視線の先にあったのは、北関東の県内トップバンク2行だ。10月26日、常陽銀行(茨城県)と、足利銀行(栃木県)を傘下に持つ足利ホールディングス(HD)が、経営統合に向けて交渉中であることが明らかになったからだ。
足利銀行は2003年に経営破綻し、一時国有化。その後、証券大手の野村HDを中心とする企業連合の下で経営再建し、13年12月に足利HDが東京証券取引所に再上場を果たした経緯がある。
ただ、野村HDはずっと銀行経営に携わるつもりはなく、グループで発行済み株式の3分の1超を持つ足利HD株の売却機会を狙っていた。そのため、足利HDは再編候補としてかねて名前が挙がっていた。しかし、野村HDは足利HDの上場時に保有株を売り出せず、その後の株価低迷で出口戦略を描き切れずにいた。再編は長らく“うわさ”のままだったのだ。
それが“現実”に大きく近づく転機となったのが、1年前に相次いで起こった大型再編だ。昨年11月、関東で地銀最大手の横浜銀行(神奈川県)と東日本銀行(東京都)が、九州で県内トップバンク同士の肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行(鹿児島県)が、経営統合の基本合意を発表したのだ。
これ以降、再編の波に乗り遅れまいと「地銀が一気に動きだした」(野村HD幹部)。そして、野村HDに対しても地銀からの接触が格段に増えたという。
地盤内の人口減少問題に加え、関東内での再編劇も重なり、危機感を募らせたのは足利HDも同様だった。そうした背景の中で、大きく踏み込んだ関係になったのが、常陽銀行だったというわけだ。
北関東3県(茨城・栃木・群馬)のトップバンクには群馬銀行もあるが、足利HDは「“西”よりも“東”の方が相性がいい」(同)。足利銀行は経営再建時に周囲の地銀に「不可侵条約」を求めたが、“東”の常陽銀行が応じたのに対し、長らく敵対関係にあった“西”の群馬銀行は応じなかったからだ。