城南信用金庫内での「徹底節電」は
どう実現したのか?
広瀬 マスコミが味方になってくれないなかで、原発廃絶を訴えるために、吉原さんが次々と行動を起こしたのですが、その成果を語ってください。
吉原 まず、城南信用金庫の店舗での節電です。
電力使用量を減らせば、原発がなくても大丈夫と言えます。電力消費が高まる夏場のピーク時には、ロビーやオフィスの温度を29度にしましたが、さすがに暑かったので28度にし、家電量販店で買ってきた扇風機を回しました。
店舗内の無駄な電灯もほとんど消しました。ロビーの電灯を消したらお客様に申し訳ないと思ったのですが、年配のお客様から「戦争中はもっと厳しかった。徹底的に節電しなさい」と背中を押されたこともありました。
フクシマ原発事故を起こして、東北の人が苦しむことになった責任者は、その電気を使ってきた首都圏の私たちですから、電力消費のピーク時に対応するためにはエネルギーの地産地消、つまり地域で生産された資源をその地域で消費することが必要だと気づきました。
そのために、本店と事務センターの屋上にソーラーパネルを設置し、本店におけるLED照明200本分の電力を太陽光発電でまかなうようにしました。
また、日本の家電メーカーのエコ技術や省エネルギー技術は世界最高峰の水準を誇っています。とりわけエアコンは日進月歩で技術が開発されています。最新のエアコンの電気消費量は、何と旧型の4分の1以下です。
私は全店舗の空調設備を買い換えることを決めるとともに、一部店舗の空調を電気から、電気を使わないガスヒートポンプ(GHP)エアコンに切り替えました。
広瀬 私も吉原さんと同じように、具体的な方法で原発ゼロを実現したかったので、フクシマ原発事故のあと、市民運動の講演会だけでなく、エネルギー業界からのたくさんの講演依頼を引き受けてきました。
そこで、この人たちが電力問題の救世主だと知って、さまざまな技術を教えてもらいました。
その一つが、今おっしゃった、ガスを使って冷暖房を行う空調システムのガスヒートポンプエアコンでした。家庭用では電動エアコンにコストで勝てないので、企業用として大普及していると教えてもらいました。GHPで真夏のピーク電力を大幅に下げられる、と。
原発の電気は、発電時と送電時にそれぞれ膨大なロスが生じるので、最終的に、つくられたエネルギーの30%しか、電気として利用者のもとに届きません。
これがガスの場合は、導管を使用するためにほぼ100%のエネルギーを届けられるため、従来の電動式エアコンに比べて冷房電力の消費量を10分の1に減らすことができます。
吉原 こうした努力を積み重ねていった結果、全店における2011年度の電気使用料を前年比で23.5%削減できました。2012年以降は、1000万円以上のコストカットですよ。当たり前の改善をすれば、いくらでも無駄な出費を省けるのです。