事実、2012年には、日本医科大と東京女子医大の研究チームが妊婦約24万3000人を調査したところ、体外・顕微授精といった不妊治療による出産で、胎盤の位置の異常、早産、低体重といったリスクが、自然妊娠に比べ1.2倍から2.7倍高いことが明らかになったと報じられている(朝日新聞、同年9月25日付記事)。

 同じく2012年には、不妊治療で出産した6163人の新生児8.3%に深刻な障害があったことがオーストラリアの研究チームによって確認されたと、専門誌で報告された(The New England Journal of Medicine、同年5月10日付)。これによると、不妊治療で出産した子どもは約12人に1人の確率で何らかの障害を持っていることになる。

 多くの医療機関が真摯に不妊治療を行うなか、そうしたリスクを丁寧に説明しない、もしくは巧みに数字データを見せ、あたかもリスクは少ないかのように装う医療機関もあるという。

「妊活は医療機関にとって、今、最も期待度の高い、収益性あるビジネスです。長期化すればするほど収益性は上がります。従って一部の医療機関では、たとえ出産の可能性は限りなく低くとも、医療技術で妊娠さえさせれば、患者側のニーズにひとまず応えたことになると考える。出産率ではなく妊娠率を前面に出すのはそうした事情もあるのです」(冒頭部で登場した産婦人科医)

不妊治療の高齢化・長期化で増大する弊害
厚労省も問題を認識はしているが…

 こうした問題は不妊治療の所管官庁である厚生労働省でも既に把握しているが、「個人が、危険性を踏まえた上で行うことに、行政として制約を設けることはできない」(厚生労働省関係者)とこれまでは静観の構えを見せてきた。しかし、ここにきて昨今の不妊治療の著しい高齢化・長期化がもたらす弊害への懸念から、行政としても重い腰を上げざるを得なくなってきた。「42歳を超えての妊娠、出産の確率は限りなく低く危険度も高い。母体への不安を考えると、何らかの対策を講じなければならない」(厚生労働省課長補佐)。

 “何らかの対策”とは、不妊治療の回数と年齢の制限だ。厚生労働省関係者によると、「43歳、通算6回まで。40歳以上で開始した場合は通算3回まで」とすべきという声が強いという。これは2016年度から新制度へと移行する「不妊に悩む特定治療支援事業」の助成対象範囲をそのまま踏襲する形である。

 助成制度が新制度に移行した後も、給付金を受給できないだけで43歳を超えても不妊治療は受けられるが、母体と生まれてくる子どものリスクを踏まえると、「やはり不妊治療を受けることそのものに制限を設けたほうがいい」(前出の厚生労働省課長補佐)との声が厚労省内の一部にあるという。