3月末決算の上場企業は約60%!
電気機器業界で集中する決算日

 本コラムが公開される頃(5月中旬)は、10年3月期決算に係る企業の決算発表がほぼ出そろう。この時期に証券取引所へ足を運ぶと、マスメディアの棚に決算資料を放り込む企業担当者でごった返す様子を観察することができる。混雑する理由は、企業の決算が特定日に集中しているからだ。

 1年は365日(閏年なら366日)もあるというのに、3月31日を決算日としている企業は、どれくらいの割合を占めるか、ご存じだろうか。

 09年9月末で調べたところ、その時点での上場企業数は東証一部から新興市場までを含めて3892社あった。そのうち、3月末を決算日としている企業は2294社。実に58.9%の企業の決算日が、たった1日(3月31日)に集中しているのだ。

 その2294社のうち、所属する企業数が最も多いのは卸売業界の244社。その次が電気機器業界の195社。そのコアを形成するのが、電子部品業界だ。今回は電子部品メーカーの代表である、日本電産・京セラ・村田製作所(証券コード順)に関する話題を提供する。

 ただし、電子部品業界そのものを論じようというのではない。日本電産や京セラなどの決算データを拝借して、筆者オリジナルの本当に使える経営指標を紹介するのが目的だ。「戦略利益Strategic Margin」と名付ける。その計算構造は〔図表 1〕の通りである。

 この戦略利益をベースに、第26回コラム(自動車業界編)以降、その計算根拠を不明確なままにしてきたROE-TAKADAやPER-TAKADAの導出方法を紹介するのが今回のメインである。これまで多くの経営指標を紹介すると同時に、それらの問題点について言及してきた本コラム。今回はそれらの問題点を再度検証すると同時に、国際会計基準(IFRS)が導入される時代を迎えて、筆者から、新しい経営指標「戦略利益」を提案しようという企みだ。

 この戦略利益やPER-TAKADAなどを説明するにあたっては、いままで取り上げてきた「第26回:トヨタ自動車編」、「第28回:キヤノン編」、「第30回:鉄鋼業界編」、「第31回:総合商社編」のほうが説明しやすい。今回取り上げる電子部品業界は、流通業界のような価格差別化や、車や家電などの製品差別化といったものがないので(これらは最終消費者を相手とした分類である)、他社比較が難しい。日本電産・京セラ・村田製作所の間では、競合する電子部品がほとんどないからだ。

 それでもなお、戦略利益などの指標を用いて、3社の業績を比較することが可能かどうかを問うてみよう。