そうはいっても、「生活保護の人たちは、働こうという気が足りないんじゃないか?」という見方は根強い。私自身、生活保護利用者から強い就労意欲を感じることは、皆無ではないけれども多くはない。ケースワークの一環として就労指導にも関わるAさんから見て、実情はどうだろうか?

「稼働年齢で健常だけど働いていない生活保護の方々には、人間関係も含めたスキル・職業能力・社会的経験など、数多くの欠落があって、働こうとしても働けない・働き続けることの難しい方が数多く含まれています。就職活動を熱心に続けて不採用が何十回も続いた結果、就労意欲が失われた方もいます。でも、中には、『本物の怠け者じゃないのか?』と言いたくなる方もいます」(Aさん)

本物の「怠け者」を
ケースワーカーは放置するのか?

「自分の目の前で、『働かなくてお金もらえるんだから、これでいいじゃないか』と言う生活保護の方も、います。圧倒的に少ないですけれど、ゼロではありません」(Aさん)

 そういう時、ケースワーカーとして、Aさんはどうするのだろうか?

「まず、生育歴などをたどり直して、なぜそうなったのかを理解するようにしています。そういう方々は基本、成功体験がなく、イヤな思いをしつづけていることが多いです。昆虫のノミの上、10cmくらいのところにガラス板を置いておくと、ノミは10cm以下しか飛ばなくなります。高く飛べばガラス板にぶつかりますから。そして、ガラス板を外しても元のようには飛ばなくなります。本当は高く飛べるのに。それと似たことだと思います」

 もちろんケースワーカーとして、就労の可能性がありそうなら、就労活動は勧める。

「でも、面接を勧めてみても『どうせ自分なんか、採用されないですから』。傍から見ると、『本当は働く気がないんだろう?』ということになるでしょう。自分も、そういうふうに思ってしまう瞬間がありますけど、怒っても罰を与えても『働く気がない』が治るわけではないですからね。現状ありのままを受け入れた上で、働きかけ方を考える必要があります」

 しかし、ケースワーカーの尽力と無関係なところから、転機がもたらされることもある。

「B市ではC社に委託して、就労への動機づけをする入門講座をお願いしています。就労意欲の薄い生活保護の方々に、そういう講座に何とか通っていただくと、同じクラスの受講者に魅力を感じる人がいて、友達になったりします。その友達が就職に成功すると、『自分も頑張ろう』と思うようになる場合があります。もちろん、そう思わない場合もあるわけですけど、成功体験をした人が、しかも似たような背景を抱えた人が近くにいるのは、とても良いことです。成功体験を間近に見ると、『やってみよう』という気になる可能性が高くなるでしょうね」