2013年12月に改正生活保護法・生活困窮者自立支援法が成立してから、まもなく満2年になろうとしている。これらの法律の「目玉」の一つは、就労支援の強化であった。生活保護利用者の就労は、今、どうなっているのだろうか?

今回は、福祉事務所で働くケースワーカーのインタビューを中心に、「就労支援のいま」を紹介する。

民間企業への就労支援委託で
生活保護利用者の就労は増えたのか?

生活保護への就労支援はやっぱり絵に描いた餅生活困窮者が努力してもなかなか職に就けない厳しい現実。生活困窮者自立支援法が成立後もその状況はあまり変わっていない

 Aさん(58)は、東京都内B市の福祉事務所で働くベテランケースワーカーだ。福祉職として就職したわけではないAさんは、福祉畑以外の職場も経験しているが、福祉事務所の勤務経験は通算20年以上になる。

 B市は2014年4月から、生活困窮者向け就労支援事業をC社に委託し、モデル事業を開始した。2015年4月からはモデル事業ではなく、B市の正式な生活困窮者自立支援事業となっている。C社の業務内容は、人材派遣・業務委託・人材教育・再就職支援など、企業の人事に関するありとあらゆる場面にわたる。反貧困運動界隈からは、「生活困窮者支援の名のもと、悪評もある人材派遣企業を儲けさせるとは」という批判も多いが、B市では生活保護利用者の就労支援もC社に委託している。現場のAさんから見て、C社はどのような存在だろうか?

「良い面も悪い面もあります。良い面は、職業開拓がやりやすくなったことです。つい先日も、軽い知的障害のある生活保護の方が、日雇いですけど試験雇用にこぎつけました。C社は、もちろん就職活動のフォローもするんですが、雇用が決まった後で職場に就職する時に提出すべき書類をご本人が出せなかったりするときのフォローもしています。実に丁寧な支援です。そういう社会資源があるという意味では、C社の存在は『とても良い』と思います」

 たとえ短時間労働であっても正式雇用となり、就労収入を障害年金などと合わせて生活保護から脱却できれば、それは望ましい成り行きの一つではあるだろう。

「でも試験雇用の職場で、細かい指示が守れず、数が数えられないので、足手まとい扱いになり、職場で同僚たちから大ブーイングを受けたんです。残念ながら、試験雇用から正式雇用には至りませんでした」

 では、C社への委託の「悪い面」は?

「ケースワーカーが、就労支援から一歩引いた形になりました。もちろん、自分たちの業務ですから、心にはかけます。でも、身体は動かさず、専門家に任せる形です」

 成果の方はどうだろうか?

「C社さんで、ある程度の安定のある就労につながった方もいます。B市では、ハローワークと協力した就労支援も、これまで通りに継続しています。ハローワーク以外の相談先が一つ増えた感じですね。ただ、就労による生活保護脱却が激増したわけではありません。C社さんへの委託以前と以後で、大きな変化はないという実感を持っています」