加齢黄斑変性(AMD)とは、網膜の中心部にある「黄斑」が加齢によって障害される眼疾患を指す。

 網膜は視覚的な光情報を電子情報に変換する組織。デジタルカメラでいえば「イメージセンサー」に当たる。黄斑はそのなかでも高精細・高感度の組織で、黄斑が損なわれると視力全体に影響を及ぼす。実際、国内の失明要因の第4位はAMDで、3:1の割合で男性に多く、50歳以上の約1%が同疾患を患っているという。

 眼の加齢を遅らせる手段としては、紫外線を避ける、眼を酷使しない、などの手段が思いつく。もう一つ、米国医師会雑誌「JAMA」の眼科学版に掲載された報告によると、カロテノイドが良いようだ。米ハーバード大学公衆衛生学部の研究から。

 研究者らは、米国在住の医療従事者を対象とした1986~2010年の健康調査データを使用。50歳以上の男性3万8603人、女性6万3443人のデータから、食事とAMDとの関連を調べた。試験期間中、約2.5%が中等度~重度のAMDを発症した。

 食事とAMD発症リスクの関連を調べたところ、ルテインとゼアキサンチンというカロテノイドを最も多く摂取していた集団は、最も少ない摂取集団より、重度のAMDリスクが40%低いことが判明した。ただし、中等度AMDリスクとの関連は認められなかった。

 研究者は「カロテノイドを豊富に含む野菜や果物の摂取を増やすことで、進行性AMDを減らせるかもしれない」と考察している。

 ルテインとゼアキサンチンは色の濃い野菜に含まれる抗酸化成分。ニンジンの赤、ホウレンソウやブロッコリーの濃い緑、カボチャやパプリカの橙色が含有の印だ。

 冬が旬のホウレンソウの場合、これから出回る「寒締めホウレンソウ」のルテイン含有量は、100グラム当たり11~12ミリグラムと、ぐんと高くなる(通常は品種にもよるが7ミリグラム前後)。ルテイン以外に「眼に良い」とされるβカロテンの含有量も増えるので一石二鳥だ。

 ルテインは加熱に強く、油脂と一緒に食べると吸収率が良くなる。シンプルな野菜炒めでどうぞ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)