佐藤 少し悲観的すぎるかもしれませんが、日本には本当に経済を再生させるだけのエネルギーが残っているでしょうか。

モス アダム・スミスが1776年に『国富論』を発表したとき、イギリスはまさに世界でも類をみないほどの経済成長を遂げようとしていました。にもかかわらず、人々は「イギリスの時代は終わった。イギリス経済は落ち目だ」と口々に言っていました。なぜそんな風に考えたのでしょうか。その問いに対して、アダム・スミスの『国富論』は素晴らしいインサイトを与えてくれます。

 スミスは言います。「最も古い産業や地域というのは、最も人々の目にさらされやすいからだ」と。しかも歴史の長い産業や国というのは、たいてい、衰退しつつあるものです。ところが新しい産業や新興国というのは、どんなに活気があっても、世の中に知られていないケースが多いのです。

「まだまだ経済成長しそうな国であっても、衰退しつつあるように見えてしまう」。これは18世紀後半のイギリスだけではなく、現在の日本にもあてはまるのではないかと思います。つまり、日本や日本の伝統的産業は、長い歴史を持つ分、人々からも注目され、問題が目につきやすい、ということです。実際には、その中から、新しいエネルギーも涌き出しているのですが、それがよく見えないために、人々は過度に否定的な将来図を描いてしまうのだと思います。

 日本に問題がないとは言いません。問題があるのは事実です。しかし、日本の人々が思っているよりも、はるかに日本経済は強い、と私は信じています。日本の強みは、結果的に弱点をしのぐほどの威力を発揮してくれるはずです。長期的に見れば、日本の将来は明るいと私は思います。