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ソニーを抱き込んだグーグルが狙う
テレビの“突然変異”と打倒アップル

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第96回】 2010年5月26日
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 もちろん、ウェブ・ブラウザーも使えるので、通常のコンピュータと同様、オンラインでショッピングしたり、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワークサービス)に書き込みをしたり、ツイッターでつぶやいたりすることもできる。

 ソニーにとってのうま味は、競争がますます激化しているテレビ市場で、グーグルという味方をつけてアドバンテージを得られることだ。テレビ市場ではサムスンに、コンピュータではアップルに話題を奪われているソニーにとって、この提携は巻き返しのチャンスを与えてくれる。

 また、グーグルTVは開発者にオープンであるという点で、これまでのテレビとは異なるものになる。つまり、iPhoneアプリのようなものが、テレビ向けにたくさん開発されることになる。想像もしなかったようなテレビ・アプリが出てきて、びっくりすることになるかもしれない。

 グーグルTVは、早くも今秋に発売される予定だ。

 だが、テレビとインターネットの融合には、これまでに数えきれないほどの失敗例がある。マイクロソフトのウェブTV、アップルのアップルTVなど、どれも大きなヒット作にはならなかった。現在でもインターネットにつながるテレビはあるが、その機能は限られている。

 しかもグーグルTVは、インターネットをテレビに“完全統合”させようという試みだ。ブラウザーなどテレビ画面で見たくないとか、テレビ・スクリーンで文字を読んだりするのはまっぴらだといった庶民の声が早くもメディア上で紹介されている。ウェブをウェブとして見せないような工夫が、グーグルTVをメインストリームに上げるためには必要となるだろう。

 とは言え、アップルのタブレット・コンピュータ「iPad」は、コンピュータをミューテーション(突然変異)させて、新しいタイプのユーザー・エクスペリエンスを生んでいる。グーグルTVも、テレビを変異させて、新しいテレビの楽しみ方を打ち立てる可能性もなきにしもあらずだ。

 折しも、ケーブル・テレビ大手のコムキャストが、iPadをテレビのリモート・コントロールとして利用するiPadアップを発表した。テレビもコンピュータもインターネットもCATVも、あらゆるものが互いに近寄ってきたという感がある。混み合ったエンタテインメント・コンテンツ市場の勝者は、リビングルームの消費者のまだ見えない欲望を探し当てる者だ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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