「怖れ」を手放せば、もっとうまくいく

「怖れ」にとらわれているリーダーを、私は「怖れのリーダー」と呼んでいます。

 それに対して、この対極の存在を、私は「機能するリーダー」と呼んでいます。「機能するリーダー」とは、前回も述べたように「部下に効果的に働いてもらえる」リーダーのことです。

 マイナスの感情にとらわれ振り回されるのが「怖れのリーダー」であり、自らのマイナス感情を「怖れ」として認めて、原点に立ち戻ることができるのが「機能するリーダー」です。

 ただし、ここでひとつ付け加えておきたいのは、「マイナスの感情がすべて悪いわけではない」ということです。ご存じのように、人間の感情とは、生物としての人間に備わった自己防御能力なのです。

 ですから、例えば不安を感じるということは、「安全が確保されていない」ということを知らせてくれるものです。だから、未経験のまったく新しいプロジェクトに取り組むときなどは、不安を感じるのは当然のことと言えます。

「未知=安全が確保されていない」ということだからです。

 しかし、そんなときでも、「怖れのリーダー」が、不安からピリピリと部下に嫌な態度をとるのに対し、「機能するリーダー」は、「これは新しい体験だから、不安になって当たり前だ。みんなで力を合わせて頑張ろう」と、軸をしっかりと定めることができます。

 そう言われれば、部下のみんなも、「そうだ、頑張ろう」と思うでしょう。

 他の感情についても、まずは自分の内面を振り返り、何が心配なのか、何が不満なのかをよく考え、そのうえで効果的に部下と関わることができるのが「機能するリーダー」なのです。

焦り、不安、孤独感、無力感、猜疑心、警戒心など、自分の中の「怖れ」を
認め、それを手放すことができれば「機能するリーダー」になれます