少なくとも130人が死亡した卑劣なパリの同時多発テロ事件から、早くも1ヵ月が過ぎようとしている。犠牲になった方々に深い哀悼の意を捧げるとともに、この事件の意味するところを少し考えてみたい。
テロとは歴史の進歩、
人類の進歩に反する行為だ
学生時代に読んで深く腹落ちした本がある。市井三郎「歴史の進歩とはなにか」がそれで、この世に生を受けた人間が自分には全く責任のないことで、自分の好きな生き方ができなかったり、チャレンジする機会が与えられないこと、あるいは、意に反することを強制させられること、そういった事象を少しでも減らしていくことが歴史の進歩である、といった趣旨だったと記憶している。
テロは、突然、理不尽にも自分に全く責任や落度のない状況で命を奪われるわけだから、その意味では歴史の進歩を逆行させる暴挙という他はない。ひとり一人のかけがえのない人生を大切にする方向性こそが、歴史の進歩であり、人類の進歩なのである。
テロは急増しており
犠牲者の約8割が上位5ヵ国に集中
ところで、テロの犠牲者は近年どのように推移しているのだろうか。アメリカ国務省のデータによれば、2010年から12年まで1万1000~1万3000人レベルで推移していた犠牲者数がここ1~2年で急増しており、2013年は1万8000人を超え、14年は実に3万3000人に達しようという勢いである。
個々の国別にみるとイラクの9900人超を筆頭に、ナイジェリア、アフガニスタン、パキスタン、シリアの上位5ヵ国で犠牲者の約80%を占めている。