「サンデージャポン」「人生の深イイ話!」にも出演で話題の女子高生社長・椎木里佳さん。パパは「鷹の爪」で有名なコンテンツ会社「ディー・エル・イー」の椎木隆太社長です。

 里佳さんが、上場企業の社長であるパパに経営について学ぶこの企画。今回は「金銭感覚」に話が及びます。

(取材・構成:佐藤智、竹村俊介、撮影:小川孝行)

「社長の経営感覚」と「女子高生のお小遣い」のジレンマ

 

勘違いしたまま大人になる奇跡

里佳 パパって、(故郷である静岡の)磐田に住んでたとき「磐田の中で一番お金持ちで、もしかしたら、日本で一番お金持ちじゃないか」って思ってたんでしょ?(笑)

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 東京へ来て、慶応へ入ったら、むしろ下から数えた方が早いみたいな感じですごくビックリしたって言ってなかった? すごい勘違いっぷりだよね。

パパ でも、そういう「井の中の蛙になれる」幸せっていうのかな。それこそ「自分は世の中をコントロールしているんじゃないか」ぐらいの勘違いって、実は大事なことじゃないかなとも思ってて。

 だから里佳には、そうやって勘違いしたまま、「私のパワーであれば、こんなことまでできちゃうんじゃないか」って思っていてほしい。ちょうど里佳は「大海を知り出した」ところかもしれないけど、少なくとも「自分の力があれば大きなことだってできる」って思っておくのはとても大事かなと思うよ。そこを勘違いしたまま大きくなれるって、奇跡的だと思う。

里佳 私はまだまだこれからだよ!

パパ パパは田舎で育って、本当にラッキーだった。「起業して成功できるんじゃないか」と思い続けられたのも、田舎で身についた「井の中の蛙マインド」のおかげ。

 大学入って、ソニー入って、それぞれ少し壁にぶつかったけど、結果的には大学生活、海外駐在、出世とかもトントンとうまくいって、「これなら俺、起業しても絶対成功して、世界で大活躍できるんじゃないか」って、ずっと勘違いできた。

里佳 いつまで勘違いできたの?

パパ 本当に身の丈を知り始めたのって、起業して最初の三年間かな。パパの中での「暗黒時代」。

里佳 さすがの楽観的なパパでも苦しかった?

パパ 起業して、全然上手くいかなくて、うちひしがれて、はじめて本当の意味での感謝の気持ちとか、「自分一人では何もできない」ということを知れた。

 これは、起業した大きなメリットというか、自分の人生にとってかけがえのない経験だったね。苦しかった時代だけど、自分の人生にはどうしてもその経験が必要だったと今は思えるよ。

里佳 井の中の蛙って、ふつうは悪いほうで言われるじゃん? 勘違いするな、とかっていう親も多いんじゃない? 井の中の蛙でいいの?

パパ 井の中の蛙は絶対なるべきだと思うよ、僕的には。自分自身を信じる気持ちが生まれるから。

里佳 でも、大海に出たときに、打ちのめされたりしない? 挫折感とか。

パパ 中途半端な井の中の蛙じゃダメなんだよ。超最強の井の中の蛙。井の中では楽勝するくらいの実力がありつつ、勘違い度がハンパない感じの。大海に出ても「まだ俺、やっぱり勝てるんじゃねえか」ぐらいの。

里佳 勝てるはずだ、って?

パパ 「塩水だろうがなんだろうが、俺、絶対生きていけるはずだ」ぐらいの強い信念だね。

里佳 そうすると、いろいろあったとしても「できるはずだ」って自信は揺らがない?

パパ そうだね。

 僕の親も、田舎だったけどすごく豊かな暮らしをさせてくれた。文化的にも金銭的にも、田舎ではじゅうぶんすぎるぐらいの生活をしていて。そこで「僕もこういう生活ができるんだろう」と。それが当然のレベルで、そこからもっとすごくなりたいと思えたんだよね。

 だから同じように、今、里佳に見せている生活をスタートラインだと思って、親のレベルを超えるような成功をしてほしいかな。

里佳 そんなこと言ってるけど、お金について勘違いするなって、最近すごくうるさくない?

「社長の経営感覚」と「女子高生のお小遣い」のジレンマ

 

お金の勘違いはよくない

里佳 こないだも友達とご飯食べに行くとき「お金ちょうだい」って言ったら、「千円しかあげない」とか言って。それじゃ、交通費だけでなくなっちゃう。で、「勘違いしちゃダメ」とか言ってくるよね。そこはどうなの?

パパ それはそうだよ。

里佳 なんで? 勘違いしたほうがいいんでしょ?

パパ 友達と楽しく食べられるんなら何だっていいんだよ。千円でおつりが来るよ。

里佳 いやいや、千円で夕食なんて無理でしょ? マックでも700円ぐらいよ、今。

パパ じゃあ千円はサポートするけれど、残りは自分で払えばいいじゃん。

里佳 いやいや、ムリムリ。

 ていうか、パパはどうだったの? 中高生のんとき。お小遣いだった? 自分で働いて稼いできなさい、とか?

パパ んー、「くれくれ」って言ってもらってたかな。(汗)

里佳 オッケーイ(笑)。

パパ いや、でも、まあ、そうだね。(汗)

 お金のことは、ほんと悩ましい問題なんだよ。

 たしかに、里佳が起業して、自分で稼いだお金を自分の意思で再投資したり、使えるようになるのが、経営者としての本来の姿。

 でも「自分への投資」とか言って、際限なく自分に必要なもの揃えたりしたら、とんでもない生活をしちゃうでしょ? その年齢でお小遣いとかバイト代とかそういうレベルじゃない金額を手にしたら、経営者として重要な金銭感覚というものが狂っちゃうかもしれない。

 起業して「自分で稼いだお金だから、全て自由に使いたい!」って思うかもしれないけど、そうしちゃったら金銭感覚を見失う悪影響のほうが大きいんじゃないかな〜?って。

里佳 金銭感覚ねー。

パパ お金をどこにどれくらい使うかって、経営の根幹でしょ? どこに投資するかとか、そういうのも含めて経営で。そこは経験しながら覚えるしかない。

 こないだも「JCJK調査隊」のサイトを作るとき、里佳が「何十万かかってもゴーだ」って経営判断したわけじゃない?

里佳 サイトには何十万もかけて作れるけど、ご飯代は千円か……。

パパ そう。そうやって、しっかりと経営判断しつつも、高校生的な金銭感覚も維持する仕組みが必要だと思う。だって、高校生なりの金銭感覚がないと、マーケティングサービスにも影響があるって自分でも言ってたじゃん。

里佳 それはそうだと思うよ。やっぱリアルなJCJKの気持ちがわかんないと判断間違うからね。

パパ いやほんと、その通りだよ。でも、ビジネスでそこそこ大きな金額扱ってるから、プライベートでも使いっぷりよくなっちゃんてるんじゃないの?

里佳 いやいや、そんなことないよ。結構最近までお小遣い、月に5000円しかもらってなかったじゃん。

 普通の高校生でも、もうちょっともらってるでしょ? 普通にお小遣いで。で、やっと「働いているから1万5000円にしてあげる」って認められて、それなら普通かなと思って生活していたんだけど……。

 高3にもなるとみんなアルバイトし始めて、7〜8万円、月に稼いだりするのね。私よりもいろんなものを買って、キャッキャしてるのを見て「あれ? 私、社長だよね?結構稼いでるよね?」って思って。だから、最近お小遣い少な過ぎって抗議してるんだよ。

パパ そりゃ社長かもしれないけど、あくまでもお小遣いだからね。その辺がだらしなくなって金銭感覚がズレて、「なんでも買える! なんでもできる!」みたいに、勘違いしちゃったら、あとあと大変だよ。

里佳 その勘違いはダメなんだ?

パパ あくまで勘違いは、自分の可能性に対してだけ。金銭感覚の勘違いは、取り返し付かないから。

里佳 うん、わかった。。。でも18歳になったから、お小遣い増額してくれない? もう選挙もできるくらいの歳でしょ! 年齢に合わせて1万8000円!っていうのはどう?

パパ (笑)うまく交渉してきたな。

(続く)

 この対談を特別編集し、「起業と経営の基本ノウハウ」を詰め込んだ椎木里佳さん・隆太パパ初の著書『女子高生社長、経営を学ぶ。』がダイヤモンド社より来春発売予定! 乞うご期待!